ポーランド政府が、中国の浙江吉利控股集団(Geely Holding)と提携する国産電
動乗用車(EV)プロジェクト「イゼラ(Izera)」をめぐり、欧州復興基金からの
支援を活用するかどうかを検討している。中国企業が自国政府から補助金を受け取
りながら欧州市場への進出を進めているという疑いで、欧州連合(EU)が複数の調
査を開始するなど、中国に対する懸念が強まっている状況を反映したものだ。前政
権下で計画された同プロジェクトをそのまま継続するかどうかは、「建物を建てる
かというだけにとどまらず、現政権の理念に関わる難しい問題」とヤン・シュシュ
コ副開発基金・地域政策相はロイター通信に自らの見方を説明した。
EUは今年に入り、「法の支配」の欠如を理由としたポーランドへの資金供給凍結を
解除した。昨秋の選挙で2015年から政権の座にあった「法と正義(PiS)」が敗退
し、中道右派のドナルド・トゥスク前欧州大統領が率いる野党連合が新政権を樹立
したことが背景にある。
EU資金の一部である欧州復興基金600億ユーロ弱(助成:254億ユーロ、低利融資:
345億ユーロ)は消化期限が約2年後に迫っており、政府は今月中に支出計画を見直
し、EUへ許可申請しなければならない。計画遅延により「イゼラ」プロジェクトで
助成を受ける条件となる「26年からの量産」が難しいため、低利融資支援に切り替
えることも検討対象に入っているもようだ。
ポーランドの電力大手4社が設立した電動乗用車開発製造会社、エレクトロモビリ
ティ・ポーランド(EMP)は2022年、初の国産EV「イゼラ」に吉利集団のEVプラッ
トフォーム「サステナブル・エクスペリエンス・アーキテクチャ(SEA)」を採用
すると発表した。当初は23年末の生産開始を予定していたが、計画が大きく遅れ、
ようやく先月、工場建設に向けて国内産業建築業者のMIRBUDと基本合意(MoI)を
交わしたところだ。現時点では年末頃の着工が見込まれている。
シュシュコ副開発基金・地域政策相は、中国企業がEUのどこかでEVを生産すれば
ポーランド人もそれを買うのは確かと考える。ポーランド以外に工場が設置されれ
ば、雇用が他の国で生まれるだけの違いで、イゼラ・プロジェクトの行方が大勢に
影響を与えることはない。
また、EU資金の消化という観点からは、他に支援を活用できるプロジェクトが存在
するかも重要な判断材料になる。現在進行中のプロジェクトも一長一短で、理想的
なものがなく、判断を難しくしている。