中国奇瑞汽車、ロシアの旧西側メーカー工場で生産開始

ドイツのフォルクスワーゲン(VW)とメルセデスベンツ、そして日産が過去に操業
していたロシアの3工場で、中国の奇瑞汽車(チェリー)がセミノックダウン
(SKD)形式で現地生産を開始した。ロシアの旺盛な自動車需要に国内生産が追い
付いていない一方、活用されていない生産設備が存在する現状に大きな商機を見出
しているもようだ。ロイター通信が消息筋の情報として報道した。
日産が2022年にロシア政府へ譲渡したサンクトペテルブルク工場では、アフトワズ
が奇瑞汽車のクロスオーバー車「瑞虎(Tiggo)7」を、ロシア向けに「エキサイト
(Xcite)Xクロス7」の名で生産している。アフトワズは1月の生産開始時、提携先
について「国際パートナー」とするだけで具体名を明かしていなかった。5〜7月の
販売台数は3,447台だった。
カルーガの旧VW工場(年産能力22万5,000台)では、ディーラーのAGRオートモー
ティブが「瑞虎」を小規模生産している。AGRは取材に回答しなかったが、モスク
ワ近郊のディーラーASCグループによると、同工場では奇瑞汽車のエンジニアの管
理の下、すでに製造を開始したという。生産規模は明らかでないが、カルーガ州の
ウラジーミル・ポポフ副知事は8月の時点で、同工場が2年ぶりに操業を開始し、今
年は2万7,000台を出荷するという見通しを示している。
モスクワ州エシポヴォにある旧メルセデスベンツ工場(年産能力2万5,000台)は、
23年4月以来、ディーラーのアフトドームの管理下にある。奇瑞汽車の高級中型ク
ロスオーバー車「星途(エクシード)VX」を生産しているもようだ。
対ウクライナ侵攻を理由に西側の自動車メーカーのほとんどが撤退したロシア市場
では、中国企業が急速にその勢力を伸ばし、販売台数ベースで50%以上を占める
(奇瑞汽車のシェアは約20%)。今回の動きは、生産においても中国企業のシェア
が拡大することを意味し、ロシアの製造業と経済が変化する中で中国の影響が強
まっている様子がうかがわれる。
ロシア調査会社のオートスタットによると、奇瑞汽車は、「星途(エクシー
ド)」、「欧萌達(オモダ)」などの傘下ブランドを含めたロシア販売台数が2023
年に20万台を超え、前年の4倍に急増した。24年はこれまでの累計ですでに23年実
績を上回っている。
なお、ソ連時代のブランド「モスクヴィッチ」のリバイバルは、中国・江淮
(JAC)のクロスオーバー車をリブランディングすることで実現した。

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