欧州ビール大手のカールスバーグ(デンマーク)は3日、ロシア政府の管理下に
あった現地子会社バルティカを売却すると発表した。ロシア事業の切り離しを進め
てきた同社は2023年6月、バルティカの売却先が決まったと発表したが、その後
プーチン大統領の命令により保有するバルティカ株を差し押さえられていた。同社
はロシア政府による「違法な接収」には屈しないとしてきたが、外国企業の撤退に
対する規制強化など圧力が増すなか、事業売却に同意したもようだ。ロイター通信
によると、取引額は340億ルーブル(約3億2,100万米ドル)とみられる。
カールスバーグはバルティカの全株式について、経営を引き継ぐことになる同子会
社の「年来の従業員2人」に売却する。対価として現金のほか、バルティカが保有
するカールスバーグ・アゼルバイジャンとカールスバーグ・カザフスタンの株式も
取得する。
昨年7月からバルティカ社長として采配を振るってきたタイムラズ・ボロエフバル
ティカ氏は退任する。プーチン大統領や側近と長年の交流がある同氏はバルティカ
の創業者で、04年まで15年にわたり同社を運営していた。
バルティカはロシア最大のビールメーカー。カールスバーグは同社を通じ、ロシア
国内に計8工場と従業員約8,400人を抱えていた。同国事業が売上高に占める割合は
9%。現地で保有する固定資産の評価額は22年末時点で75億2,000万デンマークク
ローネ(10億6,000万ドル)だった。
22年3月のウクライナ侵攻を機に、外資系企業が次々にロシア撤退の方針を明らか
にしたが、政府は撤退に際し売却資産を50%以上割り引くことを義務付けたり、売
却価格の一部を徴収する「出国税」を課していることから、撤退が難しくなってい
る。