SPD、緑の党、FDPが政権樹立の本交渉に入ることを決めた。FDPは政策理念で他の2党と距離があるものの、3党が連立を組むのはほぼ確実と思われる。FDPと政策的に近いCDU/CSUが選挙戦の歴史的な大敗で混乱し、安定した政権交渉ができる状況にないためだ。予備交渉結果をまとめた3党の文書の前文には、「野心的かつサステナブルな連立協定を締結できると確信している」との一語が盛り込まれた。
前文ではさらに、「われわれはそれぞれ違った伝統とものの見方を持つ3党を革新的な同盟へとまとめ上げ得る星座である」としたうえで、今後10年間の刷新に向けて道筋をつけることに意欲を示している。3党の野心は単なるレトリックではないだろう。
ドイツでは戦後ほぼ一貫して2大政党のCDU/CSUないしSPDがジュニアパートナーの政党と連立を組むか大連立を組むかのどちらかで政権を運営してきた。今回はこれが3党連立に変わる見通しだ。
与党が2党から3党になるだけで、大きな変化などないようにみえるが、上述したようにSPD、緑の党とFDPは思想が大きく異なっており、3党連立は歴史的な実験となる。3党の政権運営がもしうまく運ぶようであれば、将来の連立の選択肢が増え、政治文化は厚みを増すことになる。4期16年に渡るメルケル政権(2005~)のうち3期12年は他に選択肢がないという消極的な理由で大連立となっており、新しい政権の組み合わせが実現する意義は大きい。
他の3党連立の可能性としてはCDU/CSUと緑の党、FDPの「ジャマイカ政権」と、SPD、緑の党、左翼党の左派政権がある。この2つは次回選挙以降の課題となるだろう。