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2010/1/6

総合 - ドイツ経済ニュース

景気底打ちも本格回復はほど遠く、市民は先行きを比較的楽観

この記事の要約

2008年秋のリーマンショックに端を発する戦後最悪の不況は山を越した。国内総生産(GDP)は09年第2四半期から2四半期連続でプラス成長を確保。企業景況感も9カ月連続で改善が続いており、2010年通期のGDPは大幅なマイ […]

2008年秋のリーマンショックに端を発する戦後最悪の不況は山を越した。国内総生産(GDP)は09年第2四半期から2四半期連続でプラス成長を確保。企業景況感も9カ月連続で改善が続いており、2010年通期のGDPは大幅なマイナス成長となった09年からプラス成長に転じる見通しだ。ただ、危機前の経済水準に戻るには数年を要するうえ、リスクの火種もなおくすぶっているため、専門家や財界人は過度の期待を戒めている。

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各種の統計をみると、今回の危機の深刻さが改めて分かる。GDP成長率は08年第4四半期に前期比で実質マイナス2.4%となり、09年第1四半期には同マイナス3.5%にまで落ち込んだ。09年通期ではマイナス成長幅がおよそ5%に達する見通しだ。

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製造業売上も08年12月以降、前年同月比の実質減少率が毎月10%を超え、月によっては20%を突破した。特にドイツの主力産業である自動車や機械、電機で不振が目立つ。

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企業の大型倒産も相次いで起きた。信用調査機関クレジットリフォームによると、2000~09年の10年間の倒産で最も規模(従業員数に基づく)が大きかったのは昨年のアルカンドールのケースで、2位のフィリップ・ホルツマン(02年)の2倍以上に達した(下の表を参照)。上位10位には09年のものが3件入っており、同時多発テロ翌年の02年と並び最も多い。

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だが、日常生活を送っていて、危機を直接肌で感じることはほとんどない。商店街の活気は特に弱まっておらず、個人消費は09年第1、2四半期ともプラス成長を確保した。09年の平均失業者数は前年から15万人以上増え342万人に拡大したものの、05年1、2月に記録した戦後最高(500万人超)に比べると大幅に少ない。

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4半期ベースのGDPがプラス成長に転じたこともあり、市場には景気の先行きを楽観する見方も広がっている。国内の上場企業最大手30社を対象とした株価指数DAXは12月28日に6,000を突破。直近の底である3月の3,600から65%も上昇した。

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景気に危機感を持つ市民も少ないようで、独第2公共放送(ZDF)が12月11日に発表した世論調査結果では「2010年が09年よりも自分自身にとって良くなる」との回答が前年調査の22%から25%へと増加した。「悪くなる」は18%から12%に減少している。

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一方、エコノミストや経済界の現状認識は厳しく、独産業連盟(BDI)のハンスペーター・カイテル会長は「景気が下り坂になることはないが、大幅に改善することもない」と述べたうえで、銀行の融資抑制や各国の景気対策の終了などがリスク要因になると指摘した。ドイツ経済が金融危機前の07年の水準に戻るのは2014~15年になると予想している。独卸売・貿易業者連盟(BGA)のアントン・ベルナー会長も「2010年は輸出が最大10%増加する」としながらも、貿易取引が危機前の水準まで回復するのは早くても2012年だとの見方を示した。

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メルケル首相は年初のテレビメッセージの中で「率直に申し上げたい。経済危機がすぐに過ぎ去ることは期待できないと。むしろ新年になってから事態が困難になるようなものごともあるでしょう」と語りかけた。

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