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2010/2/10

経済産業情報

たかが塩にはあらず

この記事の要約

この冬欧州を襲っている寒波。「もういい加減にしてくれ」というのが大方の実感だろう。マイナス10度を超える寒気もさることながら、気分を滅入らすのはやはり雪である。\ 12月頃はまだ、季節感があって良いなどと悠長に構えていら […]

この冬欧州を襲っている寒波。「もういい加減にしてくれ」というのが大方の実感だろう。マイナス10度を超える寒気もさることながら、気分を滅入らすのはやはり雪である。

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12月頃はまだ、季節感があって良いなどと悠長に構えていられたが、1月に入ると「…」。凍結していた道路がようやく地の顔をのぞかせ「これで雪も終わりだ」と期待すると、またもや寒波が押し寄せてくる――。そんなことを一体何度繰り返したのかを、もう数えることもできない。

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雪が降れば市民は自分の家の前の歩道が凍結しないよう速やかかつ小まめに掃除する。人が転んで怪我でもしようものなら責任を問われるためだ。なかには深夜、雪かきしている家主を見かけることもあり、頭が下がる。

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しかし、この義務を一切果そうとしない市民も結構多い。そうした人の家の前はいつまでたっても凍結しており、その上を毎日歩かねばならないのはやはり嫌なものでる。早く先に行きたくても行けないし、ときどき滑って怖い思いもする。事実、ツルっと転んで骨折した人が救急車で運ばれるのをこの冬だけで2度、目撃した。

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この路面の凍結対策に威力を発揮する「化学兵器」が実は存在する。それがタイトルにある塩である。日本でも道路の融雪・凍結防止剤として使われているように、ドイツでも冬は大活躍する。シュトロイザルツ(Streusalz)という。

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だが、この心強い味方が今年に入ってからほとんど手に入らなくなった。降雪量が多すぎて、需要に供給が追い付かなくなっているのだ。小売店では売り切れ状態がかれこれ1カ月ほど続いている。

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問題が深刻なのはしかし、道路の雪かき業務を担う自治体でも在庫がほぼ底をついていることである。北ドイツのリューネブルク市当局はすでに、融雪用の塩をまく場所を大通りの交差点に制限した。ハンブルクでは塩に砂を混ぜたうえでまいている。

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メインストリート以外はもはや塩まきの対象から外している自治体も多く、ツェレやオスナブリュック、リューネブルクでは2日、道路の凍結を理由にバスが運休となった。また、ニーダーザクセン州交通省は新たな寒波が到来した2月第1週の週末(6、7日)に自動車を可能な限り利用しないよう市民に呼びかけた。

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ドイツで用いられる融雪用の塩は主にモロッコ、チリ、イタリアから海路で運ばれる。海の玄関であるハンブルクに次に入港するのは10日の予定で、それまでは国内のどこを探してもほとんど見つからない状態が続く。ごくまれに少量あったとしても、その価格は通常の5倍の1トン=200ユーロに上るもようだ。

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こうした現状を受け、政治家の間からはシュトロイザルツの備蓄制度導入を提唱する動きが出てきた。塩が石油や天然ガスとならぶ戦略物資となる日がすぐそこまで迫っているのだろうか。

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