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2010/3/3

経済産業情報

屋上の植物で汚水処理、農機大手がプラント開発

この記事の要約

農業機械大手ジョンディアのマンハイム工場の屋上で、植物を利用した汚水処理プラントが稼働している。植物の根と共生する微生物の働きにより有機化合物を分解するのがポイントで、化学処理を施す従来の汚水処理施設に比べコストを半減で […]

農業機械大手ジョンディアのマンハイム工場の屋上で、植物を利用した汚水処理プラントが稼働している。植物の根と共生する微生物の働きにより有機化合物を分解するのがポイントで、化学処理を施す従来の汚水処理施設に比べコストを半減できる。屋上を使うため、敷地の狭い建物でも問題なく設置できるのもメリットだ。

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植物利用の汚水処理プラントを開発したのは同社のハルトムート・バウアー環境部長(56)。同部長によると、プラントの誕生のきっかけは10年前にさかのぼる。

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社内アイデア部会の委員長をしていた当時、社員の1人が「工場の風景はあまりにも殺風景だ。改善してほしい」と訴えた。バウアー氏は「ただ植物を植えても儲けにならない」と考えた末、植物を利用した汚水処理施設を作るというアイデアにたどり着いた。

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生物的汚水処理施設はすでにいくつかの自治体で導入されており、技術的には可能だった。ただ、マンハイム工場は敷地面積が狭く、自治体の施設のように広い土地は使えないため、同部長は「屋上に設置する」方向で検討。屋上に何トンもの土を盛り上げれば、建物がその重みに耐えられないことを踏まえ、試行錯誤の末に水栽培が可能な湿生植物の利用を決めた。

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バウアー部長が開発したプロトタイプ(特許取得済み)の面積は150平方メートル、水深は10センチメートルで、イグサ、スゲ(菅)、葦、菖蒲などが生い茂る。工場の生産汚水とトイレの汚水を処理しており、1日当たりの浄化能力は1万リットルに上る。浄化された水はドイツの排水基準を満たしており、工場での再利用のほか、畑にまくことも可能だ。現在はマンハイム大、ハイデルベルク大と協力して、より浄化能力の高い植物を探索している。

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