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2010/3/10

ゲシェフトフューラーの豆知識

雇用主に対する批判は「言論の自由」、解雇は不当

この記事の要約

自動車大手のポルシェを批判した従業員を同社が解雇したことの是非をめぐる訴訟で、バーデン・ヴュルテンベルク労働裁判所は2月、解雇無効の判決(訴訟番号:2 Sa 59/09)を下した。判決理由で裁判官は、解雇通告の根拠となっ […]

自動車大手のポルシェを批判した従業員を同社が解雇したことの是非をめぐる訴訟で、バーデン・ヴュルテンベルク労働裁判所は2月、解雇無効の判決(訴訟番号:2 Sa 59/09)を下した。判決理由で裁判官は、解雇通告の根拠となった原告の批判は基本法(憲法)で保証された言論の自由を逸脱しておらず、労働契約に基づく被用者の配慮義務にも違反していなと指摘。解雇一時金を支払い雇用主サイドから労働契約を解除することも認められないと言い渡した。

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原告は1986年からポルシェに勤務する56歳の男性で、「連帯サークル」という極左政党ドイツマルクス・レーニン主義党(MLPD)系の組織に属する。2002年12月に同サークルのインターネットサイトでポルシェを「われわれは搾取の強化を批判する。…人間をないがしろにする病人狩りを認めない」と批判したところ、解雇を通告されたため、その取り消しを求めて裁判を起こした。

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係争は最高裁の連邦労働裁判所(BAG)にも持ち込まれた。原告はその間、同じような内容の批判を繰り返したため、解雇通告を計5回、受けている。今回の係争は5回目の解雇通告の是非をめぐるもので、裁判官は4回目までと同様、解雇無効の判断を示した。

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連邦労裁は06年に下した別の裁判の判決で、誹謗・中傷や人間の尊厳に対する侵害がない限り被用者が雇用主を批判することは言論の自由として認められるとの判断を示しており、バーデン・ヴュルテンベルク州労裁は今回、この基準に基づいて判決を下した。

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