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2010/3/31

経済産業情報

立体を見えなくする「透明マント」開発に成功

この記事の要約

カールスルーエ工科大学(KIT)と英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、3次元の物体を見えなくするメタマテリアルの開発に成功した。ナノスケールの3次元フォトニック結晶(ウッドパイル型フォトニック結晶)に特殊な […]

カールスルーエ工科大学(KIT)と英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、3次元の物体を見えなくするメタマテリアルの開発に成功した。ナノスケールの3次元フォトニック結晶(ウッドパイル型フォトニック結晶)に特殊な充填ポリマー材を組み合わせたもので、金薄膜上に作成した高さ1マイクロメートルのこぶの上にかぶせたところ「こぶのない平面しか見えなかった」という。

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メタマテリアルは、光を含む電磁波に対し自然界の物質にはない振る舞いをする人工材料のことで、原子レベルの観察が可能な光学顕微鏡、ロスのない光ファイバーや透明化技術などさまざまな分野での応用が期待されている。

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透明マント(透明化技術)開発の火つけ役となったのは、インペリアル・カレッジの研究者が2006年に発表した「負の屈折率を持つ物質で物体を覆うとその物体は見えなくなる」という理論だ。負の屈折率を持つ天然材料は存在しないため、同発表をきっかけに、これを実現するメタマテリアルの開発競争が世界中で繰り広げられるようになった。

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光や電磁波の進行方向を操れるメタマテリアルを作るためには光の波長よりも短いナノ構造を無数に積み上げていくことが必要になるが、ナノ構造を作るために従来使われている半導体の加工技術では透明効果は2次元に限られるという問題があった。

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3次元の透明化を実現するにはナノ構造を3次元レベルで加工することが必要となる。このためKITとインペリアルの研究チームはダイレクトレーザーライティング法と呼ばれる手法で3次元のフォトニック結晶を作成して積層。実験で測定したところ、波長1.5~2.5マイクロメーター(近赤外線)の範囲で透明効果が確認できたという。同研究の成果は米科学誌『Science』に掲載された。

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