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2010/5/19

総合 - ドイツ経済ニュース

ユーロ危機、独実体経済に影響なし 為替急変動には警戒感も

この記事の要約

ギリシャ財政問題に端を発するユーロの信認危機が止めどなく進むなか、ドイツの実体経済は回復軌道を着実に進んでいるようだ。財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所が4~5月にかけて実施した国内企業アンケート調査(春季調査)に […]

ギリシャ財政問題に端を発するユーロの信認危機が止めどなく進むなか、ドイツの実体経済は回復軌道を着実に進んでいるようだ。財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所が4~5月にかけて実施した国内企業アンケート調査(春季調査)によると、生産や輸出高が今年、増加するとの回答は昨年秋の前回調査から大幅に拡大(グラフを参照)。IWはこの調査結果をもとに、2010年の独国内総生産(GDP)成長率を従来予測の実質1.5%から同1.75%へと上方修正した。ただ、現在の危機が長引くと企業業績に悪影響が及ぶ恐れもあるため、経済界には警戒感が出始めている。

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IWの春季調査で2010年の生産高が前年よりも「増加する」と回答した企業は47.0%に達し、「悪化する」(17.9%)をおよそ30ポイント上回った。昨年秋の調査で増加と回答したのは34%で、悪化(21%)との差は13ポイントにとどまっていた。この半年間で需要が着実に回復していることがうかがわれる。

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需要のけん引車となっているのは輸出で、輸出の増加を見込む企業(35.9%)は減少を見込む企業(13.5%)を大幅に上回った。特に中国やインド、ブラジルなどの新興諸国で景気回復が加速していることが大きい。

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これと符丁が合うように、連邦統計局が先ごろ発表した今年3月の輸出高は前年同月比で23.3%拡大。主力の欧州連合(EU)加盟国向けは16.8%増と伸び率がやや小さかったものの、EU域外向けは34.7%増えて全体を押し上げた。

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IW春季アンケートの設備投資と雇用の見通しに関する質問では増加を予想する企業が比較的少なかった。背景には設備稼働率が金融・経済危機以前の水準をなお下回っていることがある。ただ、人員削減が今後、大幅に増える可能性は低く、IWは2010年の失業率が09年の8.2%から7.75%へと改善すると予想している。

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EU諸国の財政再建、独経済のマイナス要因にも

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ユーロの対米ドル相場は年初からこれまでに14%下落し、17日には4年来最低の1ユーロ=1.2234ドルまで落ち込んだ。ユーロ安はドイツ経済をけん引する輸出産業にとってはプラス材料のため、これまでのところ産業界に悪影響をもたらしていない。また、大手企業などは為替予約を活用するため、一定限度内の為替変動には対応できる態勢を整えている。

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ただ、為替変動幅が大きすぎると、対応しきれなくなるため、現在急速に進むユーロ安への懸念が広がりつつある。さらに、国外から輸入する石油や天然ガス、原料は通常、ドルで決済されるため、過度のユーロ安はコスト増の形で企業利益を圧迫する。自動車部品大手ボッシュのフェーレンバッハ社長は13日、訪問先のシンガポールで「危機に有効な対策を打てずユーロ安が進むことを憂慮している」との立場を表明した。

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ユーロ危機をきっかけにスペイン、イタリア、英国、フランスなどEU諸国の多くで今後、本格的な財政再建が始まると、ドイツ経済の成長が中長期的には押し下げられる恐れもある。EU諸国との取引は輸出全体の6割を占めており、これらの国で増税や公的支出の削減が行われれば、そのしわ寄せを免れないためだ。

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ドイツ銀行のアッカーマン頭取などはギリシャが財政再建を計画通りに履行しても債務を返済できないと指摘する。この場合、ギリシャ国債を保有する金融機関は大量の損失処理を余儀なくされるため、悪影響は融資抑制の形で一段と増幅される。

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