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2010/8/4

総合 - ドイツ経済ニュース

新規採用の動き、製造業に広がる

この記事の要約

経済危機でやや悪化していたドイツの労働市場が再び活気づいてきた。連邦統計局によると、2010年6月の就労人口は4,030万人となり、同月としては統一後最高を記録。企業の新規採用は世界不況のしわ寄せを最も強く受けた製造業に […]

経済危機でやや悪化していたドイツの労働市場が再び活気づいてきた。連邦統計局によると、2010年6月の就労人口は4,030万人となり、同月としては統一後最高を記録。企業の新規採用は世界不況のしわ寄せを最も強く受けた製造業にも広がり出しており、操短を行う企業は急速に減少している。今後は専門技能を持つ人材の不足が深刻化する可能性が高く、外国人技術者などの就労規制緩和を求める声が強くなってきた。

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経済危機を受け独製造業の就労者数は2009年9月以降およそ40万人減少した。人員削減の対象となったのは主に派遣・契約社員。企業は景気回復後を見据え、正社員については温存に努めた。

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一方、サービス業ではこの間、就労者数が増加。現在の就労人口は1,250万人で、景気が良好だった08年春の水準を約50万人上回っている。製造業の雇用悪化をサービス業が相殺した格好だ。

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製造業の人員削減の波はすでにピークを過ぎ、最近は輸出産業を中心に雇用を再び拡大する動きが出てきた。けん引車となっているのは自動車、化学産業で、高級車メーカーBMWはここ数カ月で派遣社員5,000人を採用した。ダイムラーはラシュタット工場の派遣・契約社員400人を正社員に格上げする。労使協定に定める非正規雇用の上限枠を突破したため、同措置が避けられなくなったという。ベアリング大手シェフラーの国内工場で働く従業員は現在、昨年末の水準を1,000人上回っている。

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化学メーカーではメルクが求人活動を強化。K+Sも従業員数を今年100人増やす計画だ。BASFはルートヴィヒスハーフェン本社工場の人員削減規模を当初予定より900人縮小する。

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工作機械大手のギルデマイスターは昨年整理した元社員の再雇用に乗り出した。

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操業短縮の対象となる被用者の数は5月に48万1,000人となり、前月から20%も減少した。ピーク時の09年5月に比べると3分の1の水準まで減少している。商用車大手のMANは近日中に操短を打ち切る意向だ。

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技術者の不足数、不況の昨年も3.4万人に

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雇用の回復は今後も続くと予想されている。中国などの新興国や米国向けの輸出が好調に推移する見通しのうえ、高齢化社会の進展を受け生産年齢人口(15~64歳)が急速に減少しているためだ。戦後ベビーブーム世代の退職は日本同様ドイツでも始まっており、これに伴い失業者が減少していくのはほぼ確実の情勢。ライナー・ブリューデルレ連邦経済相は中期的に完全雇用の実現も可能だとみている。

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ただ、優秀な社員を確保したい企業にとって生産年齢人口の減少は人材難を加速させるマイナス要因となる。

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ドイツ技術者協会(VDI)によると、国内の技術者数は戦後最悪の不況となった昨年も3万4,000人不足していた。また、現在の技術者総数150万人のうち35万人は10年以内に退職を控える56歳以上が占めており、その穴を新卒者で埋めることはできない。財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所は技術者不足に伴う経済的な損失が現在の年150億ユーロからさらに膨らむと予想している。

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こうした事情を背景にブリューデルレ経済相とアンネッテ・シャヴァン連邦教育研究相は7月末、欧州連合(EU)域外出身の外国人技術者に対する就労規制を緩和することを提唱。移住当初から永住ビザが与えられる所得水準を現行ルールの「6万6,000万ユーロ以上」から引き下げることや、国外で取得した資格や学歴の承認審査を改善することを打ち出した。

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経済界はこれを歓迎したうえで、移住希望者の教育水準や職業経験、ドイツ語能力などを点数化し、その総合点に応じて滞在許可を出すかを判断する制度の導入を要求した。

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これに対し、メルケル連邦首相は2日、現行制度を改正する必要はないと立場を表明。財界内に広がっていた期待感に水を差した。連邦雇用庁(BA)のフランクユルゲン・ヴァイゼ長官も人材不足をまずは女性など国内の人材の活用を通して実現すべきだとの見解を打ち出しており、就労規制緩和がすぐに実現する可能性は低いようだ。

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