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2010/7/28

ゲシェフトフューラーの豆知識

女性役員が少なくても差別とは言えず、最高裁が逆転判決

この記事の要約

働く女性の昇進が目に見えない壁に阻まれる、いわゆる「ガラスの天井」をめぐる裁判の控訴審判決を本誌は2008年12月3日号で取り上げた。ことのきは昇進差別があったとする原告女性の訴えが認められたが、このたび最高裁の連邦労働 […]

働く女性の昇進が目に見えない壁に阻まれる、いわゆる「ガラスの天井」をめぐる裁判の控訴審判決を本誌は2008年12月3日号で取り上げた。ことのきは昇進差別があったとする原告女性の訴えが認められたが、このたび最高裁の連邦労働裁判所(BAG)で逆転判決が下されたので、今回はこれをお伝えする。

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この裁判を起こしたのはドイツの音楽著作権協会Gemaの女性人事部長。人事担当役員の人事選考に当たってGemaが公募なしに男性社員を登用したことを問題視し、損害賠償や慰謝料など総額9万ユーロを請求した。Gemaでは提訴当時、社員の3分の2を女性が占めるにも関わらず、最上位の27ポストは男性が100%独占しており、原告女性はこれが一般平等待遇法(AGG)で禁じる男女差別に当たると訴えた。

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この主張は第1審で退けられたものの、第2審のベルリン・ブランデンブルク労働裁判所は、従業員の男女比率に比べ役員に占める女性の比率が極端に低い場合は「差別の兆候」とみなされると指摘。問題となった人事で男女差別があったかどうかを証明する義務は、原告でなく被告にあるとして、Gemaに証明を要求した。これに対しGemaは決定が公正であったことを裏付ける文書を提示できなかったため、原告に対し◇慰謝料2万ユーロを支払う◇原告が人事担当役員になっていたら得られたであろう給与と現在の給与の差額を払い続ける――ことを命じられた。

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被告と原告はこの判決をそれぞれ批判し、BAGに上告した。原告は勝訴したものの、慰謝料が少ないことを不服としていた。

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BAGは22日に下した判決(訴訟番号:15 Sa 517/08)で第2審判決を破棄。女性の役員採用率が低いという統計的なデータを差別の兆候とする見解を支持しながらも、差別があったと断定するには他の証拠も必要だとの判断を示した。

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