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2010/8/4

経済産業情報

軟組織のX線撮影が鮮明に、簡易な位相コントラスト法を開発

この記事の要約

パウル・シェラー研究所(PSI、スイス)、中国科学院などの国際研究チームは、位相コントラストイメージングと呼ばれる技術を利用して、筋肉や軟骨など従来のX線撮影では区別が困難だった軟組織を鮮明に画像化することに成功した。P […]

パウル・シェラー研究所(PSI、スイス)、中国科学院などの国際研究チームは、位相コントラストイメージングと呼ばれる技術を利用して、筋肉や軟骨など従来のX線撮影では区別が困難だった軟組織を鮮明に画像化することに成功した。PSIが数年前に開発した技術をさらに改良したもので、チームは今回の成果が、腫瘍の早期発見や空港などで危険物を検知する新たなセキュリティ装置の開発につながると期待している。

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通常のX線撮影では被写体のX線エネルギーの吸収差を画像化している。骨や金属はX線をよく吸収するため白く映る一方、筋肉、軟骨、腱、軟部腫瘍といった軟組織はX線の吸収度合いがほとんど変わらないためコントラストに乏しく、周りの組織との識別は難しい。

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X線は電磁波であるため、物体を透過するとX線の位相が変化する。この位相変化に基づくX線強度差を画像化するのがX線位相イメージングと呼ばれる技法で、X線が伝播する媒質(具体的には生体組織)の密度の違いによって生じる位相差を元にイメージ化する手法を特に位相コントラストと呼ぶ。

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研究チームは、手間のかかる位相ステッピング法を使わずに簡単に位相差を特定できる「反転投影法(Reverse projection)」と呼ばれる独自の技法を開発した。プロジェクトリーダーを務めるチューリヒ工科大のスタンパノーニ教授は「普通のX線撮影と同じくらい簡単に位相イメージング画像を得ることができる」と話す。

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今回の成果はプリント版に先立ち、米国科学アカデミー紀要(PNAS)のオンライン版(7月19日号)に掲載された。

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