プライベート・エクイティ(PE)投資市場の回復が遅れている。独プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル協会(BVK)がこのほど発表した市場動向によると、2010年1-6月期の国内PE投資額(ベンチャーキャピタル、出資、バイアウトの合算)は22億4,300万ユーロで、前年同期に比べて3倍以上に拡大したものの、金融危機発生前(08年上半期)の半分程度にとどまった。企業の買収案件自体が少ないことに加え、投資ターゲットである中小企業がPEによる出資の受け入れに消極的なことなどが響いているようだ。
\独立系投資銀行DC Advisory Partners(旧Close Brothers Corporate Finance)の関係者は『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙に対し、PEにとって魅力の高い業界ほどPEの出資に消極的だと嘆く。例えば、医療技術関連業界は安定した成長が見込めるうえ、市場が細分化しているためPEの格好の投資先だが、多くの企業は家族経営で、事業資金を自力調達できるため「今のところ身売り案件は皆無」という。
\バーデン・ヴュルテンベルク州立銀行(LBBW)の投資子会社BWKの担当者は、多くの銀行が金融危機の間も取引先企業の融資枠を引き下げなかったことがPE投資市場低迷の一因との見解を示した。景気回復に伴う設備投資などで新たな資金が必要になった企業は融資枠を利用するため、PEに依存する必要性が低い。
\財務コンサルティング会社@VISORY partnersのトビアス・シェッツミュラー取締役は、景気回復の先行き不透明感を背景に企業が買収・売却に慎重になった結果、取引案件当たりの時間が伸びたと話す。財務情報や法的文書の確認作業だけでも8~12週間、取引完了までに平均9カ月と、以前に比べて1.5~2倍の時間がかかるようになっていると指摘。「慎重なのは良いことだが、いたずらに時間がかかると取引プロセス全体が停滞する恐れがある」と苦言を呈した。ただ、いったん走り出せば取引はほぼ確実に成立するという。景気回復がここ数カ月、厚みを増しているため、秋以降には取引に踏み切る企業が増えると期待を示す。
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