バイエルン州の小村オーバーアマガウで10年に1度上演されるキリスト受難劇(Passionsspiele)が3日、無事終了した。上演回数は5月15日の開幕から合わせて109回。世界各国から実に50万人を超える訪問客があり、興行の純利益は2,500万ユーロを超えたという。
\イベントの終了後、大役を果たした出演者や裏方の多くはある場所に駆け込んだ。床屋である。
\実は昔からの決まりで参加者は上演が行われる前年の2月以降、頭髪と髭を剃ってはならず、1年半にわたって伸びるに任せなければならないのだ。受難劇という性質を考えると、参加者にある種の「受難」を体験させるこの決まりはリアリティを強める効果があるかもしれない。
\散髪は長く続いた「業」からの解放であり、床屋は顧客を次々とさばいていく。掃除をする暇もないため床には金髪、黒髪、白髪があたかも刈り落とされた羊の毛のように散乱する。
\一方、床屋には「受難」が二重の意味で訪れる。まずはイベント後の殺人的な忙しさである。人口5,200人ほどの村の3分の1以上が参加するのだから、しばらくは息つく暇もない生活が続くだろう。村で美容室を経営する女性はマスコミのインタビューに対し、3日の営業は翌日の午前4時まで続いたと述べたうえで、「地獄の一言に尽きる」と言い切った。
\もう1つの受難は何かと言うと、これは上演前年の2月から閑古鳥が鳴いてしまうことである。多くの村民が床屋に行くのを止めるのだから、経営的には「災い」以外の何物でもない。このため、観光客に土産品を売るなどして経営を維持しているとのことだ。
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