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2010/10/27

経済産業情報

法令違反の人事に事業所委の拒否権

この記事の要約

ドイツ企業には従業員の利害を代表する事業所委員会(Betriebsrat)という社内機関があり、同委は経営に関する様々な分野で共同決定権を持つ。人事はそうした分野の1つで、事業所体制法(BetrVG)99条には人事情報を […]

ドイツ企業には従業員の利害を代表する事業所委員会(Betriebsrat)という社内機関があり、同委は経営に関する様々な分野で共同決定権を持つ。人事はそうした分野の1つで、事業所体制法(BetrVG)99条には人事情報を事業所委に伝えることが雇用主の義務と明記されている。また、不当な人事には同委の拒否権が認められている。今回はこの拒否権について雇用問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が下した判決(訴訟番号:7 ABR 3/09)に即してお伝えする。

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裁判を起こしたのは新聞社系の印刷所の事業所委員会。同社では印刷所長のポストが空席となったため、社内で求人を募集したものの、誰も応募しなかった。雇用主はこれを受け派遣社員を採用しようとしたところ、事業所委員会から承認を拒否された。事業所委には法令違反の新規採用を拒否することがBetrVG99条2条1で認められており、この権利を行使した格好だ。

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では、雇用主はどんな法令違反を犯したのかと言うと、「空席となったポストに重度の障害者を採用できないかどうかを検討する」ことを義務づけた社会法典(SGB)第9部81条の規定に抵触したのである。つまり、障害者採用の可能性をまったく考慮しなかったため、事業所委員は拒否権を行使した次第だ。

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BAGは今年6月に下した判決で、事業所委の措置を適切とする判断を示した。判決理由で裁判官は、被告の雇用主は障害者の採用を検討するために労働局と速やかにコンタクトをとることを義務づけたSGB第9部81条2文の規定に違反したと指摘した。これにより障害者の就労促進義務にも抵触したとしている。

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■社会法典第9部81条1~2文

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雇用主は空席となったポストに重度の障害者、特に労働局に失業ないし求職申請した重度の障害者を採用できないかどうか検討することを義務づけられる。雇用主は労働局とのコンタクトを早急に取る。

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