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2010/11/24

総合 - ドイツ経済ニュース

アイルランド支援をめぐり駆け引き、独仏は企業税率の引き上げ要求

この記事の要約

財政破綻の危機を受け欧州連合(EU)と国際通貨基金(IFM)に緊急支援を要請したアイルランドと、同国に支援を提供するEU加盟国が、支援の条件をめぐって駆け引きを繰り広げている。最大の焦点となっているのは同国が外資誘致策と […]

財政破綻の危機を受け欧州連合(EU)と国際通貨基金(IFM)に緊急支援を要請したアイルランドと、同国に支援を提供するEU加盟国が、支援の条件をめぐって駆け引きを繰り広げている。最大の焦点となっているのは同国が外資誘致策として導入している極度に低い法人税率。ドイツやフランスなどはアイルランドの同政策を以前から批判しており、今回の支援をきっかけに是正を迫る考えだ。

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アイルランドは長い間、欧州の貧困国であり、移民の流出が止まらなかった。このため米国など海外に住むアイルランド系市民は本国の市民を圧倒的に上回っている。

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同国が急速に経済成長を開始したのは1990年代に入ってからで、1995~2000年の国内総生産(GDP)成長率は年約10%に達した。国民1人当たりのGDPはEU平均を100とした場合、1995年の103からピーク時の2007年には147へと上昇。09年には128まで落ち込んだものの、欧州経済のけん引車であるドイツの116を大きく上回っている。

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経済急成長の背景には法人税の引き下げや金融規制緩和を通した外資の誘致策がある。企業の税負担率は現在12.5%で、ドイツの29.8%、フランスの34.4%を大きく下回る。このため課税対象となる利益を同国に移転する外資は多く、ドイツは企業の実効税率を2008年に従来の40%弱から30%未満に引き下げることを余儀なくされた。(グラフを参照)

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法人税引き下げ競争のしわ寄せを受ける国はこれまで、同税率のEU最低基準を導入することを目指してきたが、アイルランドや英国の強い反対に遭い成功していない。

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法人税引き下げはマイナス効果の恐れ

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EU、IMFの金融支援を受ける国は財政再建策をこれら機関の同意のうえで策定し実施することを義務づけられる。すでに欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、IFMの専門家グループは支援額と支援条件の決定に向けてアイルランド政府と交渉中で、11月末までにまとめ上げる予定だ。

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ドイツやフランスはこの交渉で、財政再建策の1つとして法人税率の大幅引き上げをアイルランド政府に義務づけたい考え。一方、アイルランドの抵抗は強く、この問題で交渉が難航すると同国への支援実施が遅れ、信用不安問題がポルトガルなど他の財政悪化国に波及する恐れもあるため、法人税の引き下げが盛り込まれる公算は低いとみられる。

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ただ、支援提供国はアイルランドから何らかの譲歩を引き出したいもようで、フランスのサルコジ大統領は20日、「税率が低く他国に比べ増税の余地が大きいアイルランドの友人が税率を引き上げないのは理解できない」と明言し、圧力をかけた。ドイツも「法人税はアイルランド財政の歳入改善を検討する際の焦点の1つだ」(政府報道官)との立場を打ち出している。

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ドイツがアイルランドに厳しい姿勢を見せる背景には、国民1人当たりのGDPがドイツよりも高い同国への支援に国民から理解を得るには、アイルランドの国民や企業がそれなりの負担を担ことが必要との事情もある。(表を参照)

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一方、法人税引き上げ要求に対しては、マイナス効果を指摘する声もある。税率が上がれば外資がアイルランドから流出するため、雇用の悪化と税収の減少につながるとの見方だ。『フランクルター・アルゲマイネ』紙によると、こうした見解は欧州委内にもあるという。

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