スイス・チューリヒ大学、米サンディエゴ大学などの国際研究チームは、ヒ素(As)を根から取り込み細胞内に蓄積する植物で、ヒ素の輸送に関わる2つの遺伝子(トランスポーター遺伝子)の特定に成功した。今回の発見によって、ヒ素に汚染された土壌で栽培してもヒ素を貯めない農作物品種の開発につながると研究チームは期待を寄せる。
\ヒ素は地下水、土壌などに含まれる半金属で、単体およびほとんどの化合物で強い毒性がある。体内に蓄積するため、低濃度でも長期にわたって摂取すると皮膚病、腎不全、ガンなどを引き起こす。
\ある種の植物は生育の過程で土壌や水から鉛やカドミウムなどの有害な重金属を取り込み、体内において高濃度に蓄積するという特性がある。東南アジアの広い地域で主食となっているコメはヒ素を蓄積するため、住民は汚染土壌で栽培されたコメを通してヒ素を体内に取り込む恐れがある。
\植物が重金属を吸収・蓄積する際、ファイトケラチンと呼ばれるペプチドによって無毒化した上で細胞内の液胞に蓄積することは以前から知られていたが、ペプチドと結合したヒ素の輸送に関与するトランスポーター遺伝子はこれまで解明されていなかった。
\チューリヒ大などの研究チームは、モデル植物としてアラビドプシス・タリアーナ(シロイヌナズナ)を用いて遺伝子スクリーニングを実施し、ABCCという遺伝子ファミリーの一員であるAtABCC1とAtBCC2の2つの遺伝子がヒ素のトランスポーターであることを突き止めた。さらに、両遺伝子のノックアウト株を作成し栽培したところ、ヒ素の蓄積量が正常株に比べ大きく減少するとともに、ヒ素に曝露したときのファイトケラチンの産出量が減少したことが確認された。
\同研究の成果は『PNAS』の最新号に掲載された。
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