ドイツとオーストリアは1日、欧州連合(EU)に2004年に新規加盟した中東欧8カ国に労働市場を開放した。両国はこれまで人手不足の一部の業種を除いて開放を見送ってきたが、今後は業種を問わず就労を認める。独連邦政府は中東欧から新たにドイツにやってくる労働者を年10万人、連邦雇用庁は同14万人程度と見込む。
\EUでは原則的に、加盟国が相互に労働市場を開放し、各国の労働者が国境を越えて自由に移動できることになっている。しかし、04年に加盟したポーランド、チェコ、ハンガリーなど8カ国、07年に加盟したルーマニアとブルガリアに関しては、これらの国から安価な労働力が大量流入して雇用に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、従来から加盟していた西欧15カ国(旧加盟国)には最長7年、市場開放を制限することが認められている。
\英国、アイルランド、スウェーデンの3国は、04年加盟の8カ国に対し即座に労働市場を開放。フィンランド、スペインなど10カ国も06年以降に順次開放に踏み切った。一方、新規加盟国と直接国境を接するドイツとオーストリアの両国は、国内労働市場への影響が大きいとの懸念からぎりぎりまで受け入れ制限を敷いていた。
\両国の産業界は、開放によって特定の分野で労働力不足が緩和されるとして歓迎している。特に人口流出で高学歴の人材不足が深刻な東部ドイツ地域では「隣人」への期待も大きい。
\ただ、ドイツ語という言葉の壁がネックとなり、両国の労働市場開放後も引き続き英語圏が最大の労働力受け入れ先となり、仕事でドイツ語を話す必要がある業種では期待するほど人材を獲得できない可能性もある。
\また、労働市場開放が賃金ダンピングに悪用させるとの懸念も強い。ドイツ労働総連盟(DGB)のミヒャエル・ゾンマー会長は、法定最低賃金が導入されていない業界では東欧からの労働者に不当に安い賃金が支払われ賃金水準が押し下げられる恐れがあるとして、政府に対し全ての業界に適用される法定最低賃金を導入するよう求めた。
\