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2011/7/6

経済産業情報

太陽風を宇宙船の推進力に、EUプロジェクト始動

この記事の要約

フィンランド気象研究所を中心とする国際研究チームはこのほど、太陽から吹き出す電離した粒子の風(太陽風)を受けて進む宇宙船の開発プロジェクト「電子太陽風帆(E-sail)」に着手した。秒速400~800キロメートル(km/ […]

フィンランド気象研究所を中心とする国際研究チームはこのほど、太陽から吹き出す電離した粒子の風(太陽風)を受けて進む宇宙船の開発プロジェクト「電子太陽風帆(E-sail)」に着手した。秒速400~800キロメートル(km/s)ものスピードを持つ太陽風を推進力に活用することで、燃料を消費せずに高速航行できる惑星間宇宙船の実現を目指す。

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太陽のエネルギーを推進力とする宇宙船では、すでに太陽光圧力(放射圧)を受けて進むソーラーセイル(太陽帆)で研究が進められている(日本の「イカロス」など)。放射圧は1万ナノパスカルと大きい。一方、今回のプロジェクトで推進力に利用される太陽風は圧力が約2ナノパスカルで、放射圧の5,000分の1に過ぎない。

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このわずかのエネルギーを効率的に活用するため考案されたデザインは、長さ10~20キロメートル、厚さ25~50マイクロメートル、重さ数百グラムの導電性ワイヤー(テザー)を傘の骨のように機体の周りに張り広げるというもの。テザーをプラスに帯電させて磁場を形成し、太陽風に含まれる陽子の反発力を利用して推進力を得るとともに、引き寄せられる電子を電子ガンで放出してプラスの帯電を維持する仕組み。プロジェクトで中心役を務めるフィンランド気象研究所のペッカ・ヤンフネン氏の試算によると、1年間太陽風を受け続けることで徐々に加速され、最高速度は30 km/sに達するという。

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「E-sail」は欧州連合(EU)の第7次研究開発枠組み計画(FP7)の一環で、フィンランド気象研究所のほかヘルシンキ大学、独航空宇宙局(DLR)、スウェーデンのオングストレーム宇宙技術センター、伊ピサ大学など5カ国の9機関が参加している。

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