欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2011/7/20

総合 - ドイツ経済ニュース

上半期M&A件数が10%増加、景気回復追い風に 1/2

この記事の要約

ドイツ企業が売り手ないし買い手として関与するM&A(合併・買収)が増加している。日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』がコンサルティング会社M&A Internationalのデータなどをもとに報じ […]

ドイツ企業が売り手ないし買い手として関与するM&A(合併・買収)が増加している。日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』がコンサルティング会社M&A Internationalのデータなどをもとに報じたところによると、2011年上半期の件数は655件となり、前年同期から約10%増加。取引総額は430億ユーロから760億ユーロへと77%も拡大した。1件当たりの取引金額は760万ユーロから1,160万ユーロへと61%上昇している。(グラフを参照)

\

M&A Internationalのアクセル・ゴルニック社長はFAZ紙に対し、企業や事業の売却価格が上昇するとともに、買収資金の融資も銀行から受けやすくなったと述べ、売り手と買い手の双方にとって環境が整ってきたことを指摘。金融・経済危機の影響はM&A市場でも消え去ったとの見方を示した。

\

銀行融資の回復を受け、買収した企業の価値を高めて転売するプライベート・エクイティ(PE)が息を吹き返してきた。買収資金を銀行から調達しやすくなってきたためで、英PEのApaxは衣料品販売チェーンの独Takkoを米PEのAdventから買収。米PEのCerberusもキャッシュ&キャリー大手の独Metroから店舗不動産43カ所を譲り受けた(表を参照)。PEが買い手として関与した取引の件数は85件で、前年同期の57件から49%も増加している。ただ、銀行は金融危機前に比べPEへの融資に慎重になっており、確実に資金を回収できるような案件を融資の条件にしているようだ。

\

PE間の転売が目立ったのも今年上半期のM&Aの特徴で、独・北欧系の投資会社Tritonはエンジニアリング企業Dywidag-Systems International(DSI)を英PEのCVCから取得した。背景には大手企業の事業売却件数が少ないほか、自社売却を模索するオーナー企業が製品や雇用を重視する戦略投資家を優先し転売で利益を稼ぐPEを避けているという事情がある。

\

事業会社による子会社などの放出では債務の圧縮を目的とするケースが目立った。電力大手の独エーオンは英国の送電網子会社Central Networksを同業の米PPLに譲渡。高級車大手Porsche Holdingのオーナーであるポルシェ家とピエヒ家も債務返済のために同社をフォルクスワーゲン(VW)に売却することを余儀なくされた。

\

M&A Internationalのゴルニック社長によると、ドイツのM&A市場は下半期も順調に推移する見通し。上半期に発表された大規模な買収・売却計画が下半期中に当局から承認される公算が高いためだ。ドイツテレコムが米移動通信子会社T-Mobile USAを米同業のAT&Tに売却する取引だけで規模は390億ドル(約275億ユーロ)に上る。このほか、ドイツ取引所とNYSEユーロネクストの経営統合、ダイムラーとロールスロイスによるエンジン大手トグヌムの買収、VWによる商用車大手MANの買収など大型案件は目白押しとなっている。

\