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2011/7/20

経済産業情報

異なる同位体の構造を同時に測定

この記事の要約

分子構造と原子の構成要素を同時に測定できる新たな分光法をマックス・ボルン非線形光学・短時間分光光学研究所(MBI、ベルリン)の研究チームが開発した。「2つの異なる状態を同時に精確に測定することはできない」とされる量子力学 […]

分子構造と原子の構成要素を同時に測定できる新たな分光法をマックス・ボルン非線形光学・短時間分光光学研究所(MBI、ベルリン)の研究チームが開発した。「2つの異なる状態を同時に精確に測定することはできない」とされる量子力学の定説を覆す新たな技法として注目を集めそうだ。

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分子構造の分析では主に赤外分光分析法が用いられているが、不純物が混合した試料や化学的に不安定な分子、複数の異性体ないし同位体を持つ分子が混合する試料は分析することができない。観測した性質がどの分子に由来するのか特定できないためだ。

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MBIのトーマス・シュルツ博士を中心とする研究チームはこの課題を克服するため、「相関回転配列分光分析(CRASY)」と呼ばれる新たな手法を編み出した。これは共鳴多光子イオン化(REMPI)と呼ばれる手法と「フーリエ変換型回転コヒーレント分光法」という手法を組み合わせたもの。REMPIは複数の光子による共鳴励起を利用して、原子や分子をイオン化する。イオンを測定の対象とするため超高感度な分析が可能。また、共鳴波長を調節することで特定の分子(異性体)だけをイオン化して分離検出できることも大きなメリットだ。

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フーリエ変換型回転コヒーレント分光法は赤外線分光とフーリエ変換によるスペクトル分解から成り、分子を励起させる光子として赤外線を使うことで分子を振動・回転させ、この運動によって生じた波動(複合波)を個々の成分波に分解する仕組み。

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今回の実験では二硫化炭素を用い、異なる同位体(C12、C13、S32、S33、S34など)が結合した分子を混合して分析を実施した。この結果、既知の組み合わせパターン全てと未知の組み合わせ3種類を1度に測定できたという。

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研究の成果は『Science』誌に掲載された。

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