通勤途中の交通事故は労災保険の対象となる。だが、飲酒運手の場合は事情が異なるので注意が必要である。ここではヘッセン州社会裁判所が5月に下した判決(訴訟番号: L 9 U 154/09)に即してこの問題をお伝えする。
\裁判を起こしたのは勤務先である鋳鉄所から自動車で帰宅する途中に交通事故死した男性社員の妻。同社員は2007年9月21日、夜勤中に飲酒し、勤務明けの1時間半後に道路わきの溝で死亡しているのが見つかった。警察の調べでは血中アルコール濃度が0.22%と高く泥酔していたことが確認された。
\妻は労災保険を申請したが、泥酔運転を理由に却下されたため提訴。夫の勤務先では社員の飲酒が雇用主に黙認されていたうえ、上司も酒を持ち込んで夫とともに飲酒していたとして、労災の適用を要求した。
\第1審のマールブルク社会裁判所は原告の訴えを棄却、第2審のヘッセン州社会裁も同様の判決を下した。判決理由で裁判官は、血中アルコール濃度が0.11%を超える場合は法律上「絶対的な運転不能(absolute Fahruntuechtigkeit )」とみなされると指摘。そうした状態で自動車を運転し事故を起こしても労災保険は下りないとの判断を示した。
\また、職場での飲酒を雇用主が黙認してきたとの主張に対しては、雇用主が◇職場での飲酒禁止を通達していた◇飲酒禁止に関する合意を従業員と結んでいた◇従業員ののどの渇きをいやすためにノンアルコール飲料を無料で提供してきた――事実を挙げ、雇用主は職場での飲酒を防ぐ措置を取っていたとの認識を提示した。
\裁判官は最高裁への上告を認めている。
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