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2011/7/27

ゲシェフトフューラーの豆知識

内部告発者の解雇は人権侵害=欧州人権裁

この記事の要約

内部告発は告発された企業や組織の大きなイメージダウンにつながりかねない。このため、そうした動きを封じ込めたいと思うのはある意味、自然なことかもしれないが、告発者を解雇することは人権侵害に当たる。欧州人権裁判所(ECHR) […]

内部告発は告発された企業や組織の大きなイメージダウンにつながりかねない。このため、そうした動きを封じ込めたいと思うのはある意味、自然なことかもしれないが、告発者を解雇することは人権侵害に当たる。欧州人権裁判所(ECHR)は21日の判決でそうした判断を明確に示した。

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裁判を起こしたのはベルリン州立の老人ホームVivantesを解雇された職員ブリギッテ・ハイニシュ氏。同ホームでは介護士が少なく、入居者の世話が十分に行きとどいていなかった。このためハイニシュ氏は同僚とともに職員の増員を何度も要求。聞き入れられなかったため、単独で刑事告発に踏み切った。

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これを受け雇用主は同氏に即時解雇を通告した。ハイニシュ氏はその取り消しを求めて提訴したものの、ドイツ国内で行われた裁判では解雇妥当との判決が確定した。誠実義務に違反したと判断されたのである。

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同氏はこれを受けてECHRに提訴。ECHRは訴えを認め、解雇は言論の自由への侵害に当たると言い渡した。判決理由で裁判官は、健康保険組合の医療班が被告老人ホームを査察した際に介護職員数の不足を指摘していた事実を確認。原告の告発には客観的な根拠があったと断定した。また、告発を受けた検察当局が後に捜査を中止したことは、原告が虚偽の告発をしていたことを意味しないと強調した。

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そのうえで、内部告発により公共老人ホームの問題点を広く知らしめることは、老人ホームのイメージ悪化を防止するという雇用主の利害に優越するとの判断を示した。

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被告に対しては慰謝料1万5,000万ユーロの支払いを命じた。ただ、ECHRの裁判では解雇の是非が審理の対象となっていないため、Vivantesには原告を再雇用する義務がない。判決はドイツ政府が3カ月以内に異議を申し立てなければ発効する。

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