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2011/8/31

経済産業情報

水素をエネルギー源とする深海共生系発見

この記事の要約

マックス・プランク海洋微生物学研究所(MarMic)を中心とする国際研究チームは、深海の熱水噴出孔に生息する無脊椎動物で、水素をエネルギー源とする化学合成細菌を共生させて生命を維持する種があることを発見した。これまでに硫 […]

マックス・プランク海洋微生物学研究所(MarMic)を中心とする国際研究チームは、深海の熱水噴出孔に生息する無脊椎動物で、水素をエネルギー源とする化学合成細菌を共生させて生命を維持する種があることを発見した。これまでに硫黄やメタンをエネルギー源とする共生動物は発見されていたが、水素を利用する共生系が見つかったのは今回が初めてという。チームはこの「天然の燃料電池」が水素エネルギー利用開発のヒントになることに期待を寄せる。

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太陽光が届かず通常の光合成ができない深海では、浅海とは異なる生態系が存在する。400度近い熱水が噴き出す熱水噴出孔と呼ばれる場所では、熱水中に含まれる硫化水素やアンモニア、鉄をなどの無機化合物を酸化してエネルギーを得る化学合成細菌や、それらの細菌と共生する無脊椎動物などが生息している。

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MarMic、ブレーメン大、米ハーバード大など3カ国の計8機関が参加する共同研究チームは今回、大西洋中央海嶺のロガチェフ熱水噴出孔(カーボヴェルデ諸島とカリブ海の中間に位置)で深海調査を実施し、硫黄酸化細菌を共生させるシンカイヒバリガイ類(Bathymodiolus puteoserpentis)が、水素からもエネルギーを取り出せることを初めて突き止めた。同熱水噴出孔に生息する個体全体が1時間に酸化させる水素の量は最大5,000リットルに達するという。

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チームはさらに、水素の酸化にかかわる遺伝子の特定にも成功。太平洋に生息するシンカイヒバリガイ類やガラパゴスハオリムシ属、フクレツノナシオハラエビも同じ遺伝子を持っていることを確認した。MarMicの研究者は、「特に水素が豊富な熱水噴出孔では、我々が考える以上に水素がエネルギー源として利用されている可能性がある」と述べ、今後の研究の進展に期待を示した。

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今回の研究成果は『Nature』誌に掲載された。

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