クモの糸をワイヤーに使用して人工皮膚を培養することにハノーバー医科大学の研究チームが成功した。クモの糸は弾性や耐熱性に優れるほか、生体親和性や環境適合性が高く、「夢の素材」として注目を集めている。細胞の3次元培養の担体としても応用できるようになれば、再生医療の進歩につながると研究チームは期待を寄せる。
\クモの糸は強靭さと柔軟性をあわせもつ繊維で、同じ太さの鋼鉄の5倍の強度、ナイロンの2倍の弾性力があるとされる。また、◇紫外線による劣化が起こらない◇吸水性が高く帯電しにくい◇生分解性があり環境負荷が低い◇耐熱性が高い――などの特徴があり、医療分野ではすでに手術用の縫合糸として実用化が進められている。
\ハノーバー医科大学のハンナ・ヴェント氏(博士課程)を中心とする研究チームは、タンザニアに生息するコガネグモ(Nephila)属が出すけん引糸を使って実験を実施。糸を採取する道具として、直径0.7ミリメートルのステンレスワイヤーで大きさ1平方メートルほどの四角いフレームを作成し、これを回転させて引っ張りながら格子状に糸を巻き取った。1回の採取(10~15分)で1匹のクモからおよそ400メートルの糸がとれたという。
\糸を滅菌した後、まずフィブロブラスト(線維芽細胞=培養真皮を構成)を培養し、2週間後にケラチノサイト(角化細胞=培養表皮を構成)を加えてさらに3週間培養を続けたところ、2層構造の複合型培養皮膚の形成が確認された。
\今回の研究の成果はPLoS ONE(オンライン版)で閲覧できる。
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