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2011/9/21

総合 - ドイツ経済ニュース

ユーロ危機対応で独政府内に亀裂、連立解消や解散総選挙の可能性も

この記事の要約

ユーロ圏の信用不安問題への対応をめぐる政府・与党内の亀裂が政治経済の大きなリスク要因となり始めている。ユーロの中核国であるドイツの政策方針がしっかり定まらないとユーロ圏全体の危機管理体制もおぼつかなくなり、危機を助長しか […]

ユーロ圏の信用不安問題への対応をめぐる政府・与党内の亀裂が政治経済の大きなリスク要因となり始めている。ユーロの中核国であるドイツの政策方針がしっかり定まらないとユーロ圏全体の危機管理体制もおぼつかなくなり、危機を助長しかねないためだ。与党3党内の足並みがそろう兆しは出ておらず、このままではドイツの政治が機能不全に陥る恐れもある。政界内には連立政権の解消や連邦議会(下院)の解散総選挙を求める動きも出てきた。

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政府・与党内の亀裂を鮮明にしたのは、ギリシャのデフォルト(債務不履行)をタブー視しないとした少数与党・自由民主党(FDP)のレスラー党首(経済相兼副首相)の発言だ。これは大幅な債権放棄を意味するもので、ギリシャへの第2次支援を取り決めた7月末のユーロ圏17カ国合意から逸脱しており、市場には衝撃が走った。同発言を受けて欧州の株式市場は銀行株を中心に急落。ドイツ株価指数は12日に一時、5,000を割り込み2009年7月以来の低水準まで落ち込んだ。金融機関がギリシャ国債の巨額損失処理を余儀なくされ、金融・経済危機の再来に発展する懸念がにわかに強まったためだ。

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ギリシャのデフォルトの可能性を排除すべきでないとの考え自体には何ら問題がない。エコノミストの間ではむしろ支持する声が強く、独政府の経済諮問委員会(通称:5賢人委員会)は2カ月前の時点で、ギリシャのデフォルトに備えた対策を整えておくよう政府に提言していた。産業基盤の弱いギリシャが対国内総生産(GDP)比で160%に膨れ上がった債務を返済できる可能性は極めて低いためで、同委のヴォルフガング・フランツ委員長は『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙に対し、ギリシャ国債の価値を半減すること、つまり銀行などの国債保有者が50%の債権放棄を行うことが不可欠だと明言した。

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Ifo経済研究所のハンス・ヴェルナージン所長は公共第2放送(ZDF)の番組で、ギリシャは「底の抜けた樽」のようなもので、支援は金銭の無駄遣いだと断言。ギリシャのデフォルトを回避するために巨額資金をつぎ込むことは同国国債を保有する銀行の救済にすぎないと切り捨てた。

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経済学者のこうした発言は傾聴に値する。だが、政策策定の当事者である有力な政治家が発言する場合は、ギリシャがデフォルトとなった際に起こり得るリスクとその対策を事前に入念に検討し、少なくとも政府内で意見調整することが求められる。つまり、危機の発生を回避する枠組みを準備することが前提となるのである。レスラー経済相はこうした準備なしに発言したため、市場に不要な混乱をもたらした。

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社民は大連立の復活望まず

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FDPは2009年秋の政権発足以降、自党の政策方針に固執し政府の政策実現を停滞させてきた。こうした姿勢は有権者離れを引き起こし、同党の支持率は急速に低下。18日のベルリン州議会選挙では記録的な大敗を喫した。

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レスラー党首はこれを深刻な危機と受け止めているものの、ギリシャのデフォルトをタブー視しないとの考えは現在に至っても繰り返し主張している。

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このため、連立先の大政党であるキリスト教民主同盟(CDU)内からは、連立解消を求める発言も出てきた。CDUのフォルカー・カウダー院内総務はFAZ紙のインタビューで、CDUと中道左派の社会民主党(SPD)からなる大連立政権(前政権)は08~09年の金融・経済危機を緊密なチームワークで克服したと指摘。大連立政権の再樹立の可能性を示し、FDPをけん制した。ザクセン・アンハルト州のライナー・ハーゼロッフ首相(CDU)は「大きな危機の到来時には大連立政権が適している」と断言している。

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ただ、SPDは大連立に否定的だ。世論調査では同党と環境政党・緑の党の支持率が高く、選挙があれば政権を奪取できる見通しのためで、党幹部は解散総選挙を求めている。この場合、メルケル政権は選挙管理内閣となるため、ユーロ危機対応がおろそかになる恐れがある。

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