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2011/9/21

ゲシェフトフューラーの豆知識

パイロット60歳定年はEU法違反=欧州裁判決

この記事の要約

パイロットの定年退職年齢を60歳としたルフトハンザドイツ航空の労使協定に対し、欧州連合(EU)・欧州司法裁判所(ECJ)の法務官は先ごろ、EU法違反との見解を表明した。これについては5月25日号の本コラムですでに紹介した […]

パイロットの定年退職年齢を60歳としたルフトハンザドイツ航空の労使協定に対し、欧州連合(EU)・欧州司法裁判所(ECJ)の法務官は先ごろ、EU法違反との見解を表明した。これについては5月25日号の本コラムですでに紹介した。

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ECJは今月13日に下した判決(C-447/09)で同様の判断を示した。このため、同協定のEU法違反は確定した。ただ、違法とする根拠は法務官見解と異なっているため、ここで改めて取り上げてみたい。

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ドイツの法定定年年齢は現在65歳となっている。これに対しルフトハンザでは労使合意に基づきパイロットを60歳で定年とし、退職後3年間、給与の60%相当額を支給している。空の便の安全運行を狙った措置で、ドイツではこれまでこうした協定が認められてきた。

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だが、欧州連合(EU)の一般雇用均等指令(2000/78/EC)を国内法に転換する一般平等待遇法(AGG)が施行された2006年、同社のパイロット3人は60歳定年協定をAGG違反として提訴。裁判は独最高裁の連邦労働裁判所(BAG)に持ち込まれた。

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BAGの裁判官は欧州司法裁判所(ECJ)の近年の判決を踏まえ、同協定がEU法に違反している可能性があるとみてECJの先行判決を仰いだ。

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ECJの法務官は5月に発表した見解で、フライトの安全性を踏まえると定年を60歳とすること自体は不当な差別に当たらないとしながらも、そうした決定を下す権限を持つのは各国の当局に限られると指摘。労使協定で定めることは違法だとの判断を示した。

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一方、欧州司法裁の判決は、フライトの安全性を踏まえると60歳以上のパイロットの就労に制限を設けることは妥当だとしたうえで、パイロットの定年を65歳としている国があることも指摘。60歳未満のパイロットが同乗すれば60歳以上のパイロットを投入しても安全性を確保できると言い渡した。

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