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2011/10/19

経済産業情報

「スイスの資源商社は産出国を搾取」、NGOが批判

この記事の要約

途上国と先進国の公正な利益配分を目指すスイスのNGO・ベルン宣言(Berne Declaration、EvB)はこのほど、スイスの資源商社の実態をまとめた報告書を出版した。同書の中でEvBは、資源商社は資源国への支払いを […]

途上国と先進国の公正な利益配分を目指すスイスのNGO・ベルン宣言(Berne Declaration、EvB)はこのほど、スイスの資源商社の実態をまとめた報告書を出版した。同書の中でEvBは、資源商社は資源国への支払いを不当に低く抑えることで資源国の貧困を生みだす一方、移転価格税制の盲点を突いた租税回避などによって巨額の利益を得ていると指摘、厳しく批判した。

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『資源-スイスの最も危険なビジネス』と題された報告書によると、スイスにはグレンコア、Xstrata、Vitol、Trafigura、Mercuria、ADM、カーギルなどの資源商社が本社ないし事業拠点を置く。ほとんどすべてが法人税率の低いツーク州に集中している。

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同国の資源商社の売上高は1998年~2010年の期間に15倍以上に拡大し、世界で取引される原油、銅、カカオ、砂糖などの資源シェアの3分の1~半分を占めるまでに成長した。売上高トップにランキングするスイス企業12社のうち7社は資源商社が占める。スイス国立銀行(中央銀行)の試算によると、同業界の売上高は国内総生産(GDP)の3%で、機械産業や観光産業に匹敵する。

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報告書で事例の1つとして挙げられた銅産出国ザンビアでは、銅産出のロイヤリティや輸出などによる税収が過去12年間で1億7,600万スイスフランから600万フランへと約30分の1の水準に落ち込んだ。グレンコアが2000年に採掘権を獲得した同国最大のモパニ銅山は数年来赤字が続いている。

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EvBによると、グレンコアは現地子会社に不当に安い価格で銅を輸出させて赤字を計上。産出国に支払うロイヤリティを抑制し巨額の利益を得ているという。同NGOはツーク州の法人税軽減策や監視体制の甘さが温床になっているとして、州当局にも批判の矢を向ける。

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ジュネーブの高等行政研究所(HRG)の関係者は同報告書を「有益」と評価した。その一方で、EvBの見解には誇張があるとも指摘している。

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