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2011/10/12

ゲシェフトフューラーの豆知識

社員への融資、用途外使用でも解雇できず

この記事の要約

会社の経営をしていると、社員から「いついつまでにどうしてもいくら必要だから借金させてくれ」と頼まれることがときにあるかもしれない。そうした場合、事情を聴いたうえで、「分かった。では金を貸そう」という風になることもあるだろ […]

会社の経営をしていると、社員から「いついつまでにどうしてもいくら必要だから借金させてくれ」と頼まれることがときにあるかもしれない。そうした場合、事情を聴いたうえで、「分かった。では金を貸そう」という風になることもあるだろう。

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では、社員が借金を約束とは違った用途に使ってしまった場合、処分はできるのだろうか。ここではラインラント・ファルツ州労働裁判所が7月に下した判決(訴訟番号:10 Sa 133/11)に即してこの問題をお伝えする。

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裁判を起こしたのは被告企業でチームコーディネーターを務める社員。同社員は債務の返済と歯の治療代の支払いができないと雇用主に訴え7,000ユーロを借り受けた。

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借入金は原告社員の銀行口座に振り込まれた。だが、口座残高がマイナスとなっていたため、同銀行はマイナス分を相殺。このため、原告が借入金で返済予定だった債務は支払われずに残ってしまった。

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この事実を知った雇用主は同社員に即時解雇を通告した。7,000ユーロの貸借契約書に用途が明記されていたにもかかわらず、それを守らなかったのは労働契約上の義務違反に当たると考えたのである。原告はこれを不当として提訴した。

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裁判では第1審のコブレンツ労働裁判所が原告勝訴を言い渡し、第2審のラインラント・ファルツ州労裁も同様の判決を下した。判決理由で裁判官は、労働契約と貸借契約は法的にみて別の契約だと指摘。貸借契約に違反していたとしても、それ理由に解雇するのは不当だとの判断を示した。また、原告と被告の貸借契約書からは用途を特定の支払いに限定した事実が読みとれないとの判断も付け加えた。

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