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2012/3/21

総合 - ドイツ経済ニュース

社債発行が活発化、需要も旺盛 中堅企業は一般投資家向けに

この記事の要約

社債を発行する企業がドイツで増加している。『南ドイツ新聞』によると、2011年の社債発行総額は1,200億ユーロで、10年前の3倍に拡大した。企業向けの銀行融資額は1兆1,000億ユーロと10倍近い規模を誇るものの、この […]

社債を発行する企業がドイツで増加している。『南ドイツ新聞』によると、2011年の社債発行総額は1,200億ユーロで、10年前の3倍に拡大した。企業向けの銀行融資額は1兆1,000億ユーロと10倍近い規模を誇るものの、この間の増加率は5%と小さい。資金調達を取り巻く環境がリーマンショック以降、大きく変わっていることが背景にあり、社債発行の動きは中堅企業の間でも活発化している。

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鉄鋼大手のティッセン・クルップは2月下旬、総額10億2,500万ユーロの社債を発行した。償還期間は5年、利率は4.375%。

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同社は有利子債務が多いうえ、米国とブラジルの鉄鋼事業で巨額の損失を計上するなど経営状態が悪く、格付け大手のスタンダード&プアーズ(S&P)からは投機的等級である「BB+」の評価を受けている。それにもかかわらず投資家の需要は旺盛で、わずか1時間で完売したという。

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フランクフルト近郊の小都市ミュールハイムに本社を置く中堅パン製造・販売会社Wiener Feinbaeckerei。ライン・マイン地方を中心に計350の店舗を持ち、年商は1億ユーロに上る。

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同社は創業120年に当たる昨年8月から「記念社債」と命名した社債を発行している。価格は一口1,000ユーロ。大手企業の社債は一口5万~10万ユーロに上り、機関投資家か資産家でないと手が届かないが、これならば一般の市民でも購入できる。

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フランクフルト周辺地域では市民になじみの深い「パン屋」であり、同社は顧客が社債を購入することを期待している。ホームページなどを通してキャンペーンを実施中だ。

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中堅企業の社債発行ニーズを受けて、すでに専門の市場を設ける取引所も登場している。シュツットガルト取引所は「Bond M」を2010年に創設、フランクフルト取引所も「Entry Standard」を運営している。Bond Mでは一口当たりの投資口が1,000ユーロと小さく、個人投資家が購入しやすくなっている。同市場を通してこれまでに調達された資金は20億ユーロに上る。

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銀行融資の先行きに懸念

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企業が社債発行を重視するようになった直接のきっかけは先の金融危機に伴う銀行の融資抑制だ。信用調査機関のクレジットリフォームがリーマンショック後の2008年11月末に実施した企業アンケート調査では、融資を断られたとする回答が8.9%となり、同年春の調査の1.6%から大幅に増えた。「担保の上乗せを求められた」も同16.3%から35.6%に拡大。「借入金利が上がった」は約20%に上った。

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融資抑制の傾向は同年夏まで続き、その後は改善。現在は貸し渋りの兆候は特に出ていない。

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だが、ギリシャなど南欧諸国の財政危機を受けて銀行の財務懸念が浮上したことで、長期的に銀行融資に強く依存することは危険だとの判断が企業の間に広がっている。2013年から導入が始まる銀行の自己資本規制に関する新ルール「バーゼル3」の影響で、銀行が長期的に融資の圧縮に動くとの懸念が解消されないことは追い打ちをかける。

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社債発行には追い風も吹いている。欧州債務危機の影響で投資対象としての国債の魅力が大幅に低下しているため、比較的安全で金利も高い社債に投資家の関心が集まっているのだ。

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大手メーカーは顧客に自ら融資

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電機大手のシーメンスは金融市場の先行き不透明感を踏まえ、危機の再発があっても顧客企業が同社製品を購入できるようなサポート体制を構築した。具体的には2010年末にドイツで銀行免許を取得。顧客が銀行融資を断られた場合でも自らが融資できるようにした。

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工作機械大手のギルデマイスターは戦略提携先の森精機、および三井物産と共同で金融サービスの合弁会社MG Finance GmbHを運営。顧客企業をファイナンス面からサポートしている。需要は大きいという。

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