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2012/5/2

ゲシェフトフューラーの豆知識

一般平等待遇法の差別禁止規定、取締役にも適用

この記事の要約

2006年8月に施行された一般平等待遇法(AGG)は職場などにおける差別を防止することを目的としている。これまでは被用者ないし採用募集者が同法を根拠に提訴し、企業などから損害賠償の支払いを受けるケースがもっぱらで、役員に […]

2006年8月に施行された一般平等待遇法(AGG)は職場などにおける差別を防止することを目的としている。これまでは被用者ないし採用募集者が同法を根拠に提訴し、企業などから損害賠償の支払いを受けるケースがもっぱらで、役員にも同様の権利があるかどうかは定かでなかったが、通常裁判の最高裁である連邦司法裁判所(BGH)は4月23日の判決(訴訟番号:Ⅱ ZR 163/10)で「権利がある」との判断を示した。

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裁判を起こしたのはケルン市が保有する有限会社の病院の元取締役(Geschaeftsfuehrer)。同社の監査役会は2008年10月、09年8月末で切れる同取締役の任期を延長しないことを決め、代わりに41歳の応募者を新たな取締役に任命した。原告は任期が切れた時点で62歳に達しており、取締役委任契約を更新されなかったのはAGGで禁じられた年齢差別に当たるとして提訴。損害賠償11万ユーロの支払いを請求した。

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第1審のケルン地方裁判所は原告の訴えを棄却。第2審のケルン高等裁判所は原告勝訴の逆転判決を下し、被告企業に対し3万6,600万ユーロの支払いを命じた。原告と被告はともに上告した。

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最高裁のBGHも年齢差別に当たるとする原告の訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、任命や昇進の場合は取締役であってもAGGが適用されるとの判断を提示。そのうえで被告企業の監査役会長が、原告の任期を延長しなかったのは年齢が高いためだとマスコミに対し発言したことを差別の証拠として採用し、損賠支払いを被告企業に命じた。ただ、第2審が行った損害賠償の計算方式には誤りがあったとも指摘。ケルン高裁に裁判を差し戻した。

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