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2012/5/16

総合 - ドイツ経済ニュース

企業投資に欧州債務危機の影、事業拡大よりも債務圧縮など優先

この記事の要約

ドイツ経済が好調に推移しているにもかかわらず、企業が投資活動に慎重になっている。欧州債務危機を受けて世界経済の先行き不透明感が強まっているためだ。新しい市場の開拓や他社買収よりも財務力の強化を優先する姿勢が目立つ。そんな […]

ドイツ経済が好調に推移しているにもかかわらず、企業が投資活動に慎重になっている。欧州債務危機を受けて世界経済の先行き不透明感が強まっているためだ。新しい市場の開拓や他社買収よりも財務力の強化を優先する姿勢が目立つ。そんな傾向が最近、相次いで発表されたレポートで浮き彫りになっている。

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今年1-3月期の国内総生産(GDP)成長率は前期比で実質0.5%となり、マイナス0.2%となった前期(10~12月)から大きく回復した。欧州連合(EU)の主要国は英国とスペイン、イタリアがマイナス成長。フランスも横ばいにとどまっており、ドイツが欧州経済をけん引している格好だ。

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コンサルティング大手デロイトが独大手112社の最高財務責任者(CFO)を対象に実施したアンケート調査ではこうした状況を反映して、「自社の業績が今後拡大する」との回答が28%に達し、「悪化する」の16%を大きく上回った。ドイツ企業は新興国にしっかりした足場を築いたことが大きな強みとなっており、足元の欧州経済低迷の影響を相殺できている。

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だが、欧州債務危機の先行きに対する懸念は根強く、危機の影響で需要が落ち込むとの回答は70%に達した。ユーロ危機が深刻化すれば中国などから欧州への輸出は減少し、独企業の新興国事業もしわ寄せを受けかねない。

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このため、買収などの‘攻めの姿勢’を積極化するよりもコストや債務の削減など‘守りの姿勢’を優先する企業が多いとデロイトの調査主任は語る。そうした傾向は特に製造業と金融業で強いという。

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一方、コメルツ銀行の委託を受けてTSN-Infratestが独中堅企業の経営者ないしオーナー4,000人を対象に実施したアンケート調査によると、ユーロ危機が事業にもたらすマイナスの影響として「事業計画を立てにくくなった」を挙げたのは全体の72%に達し最も多かった。輸出型企業に限ると同比率は75%に高まる(グラフを参照)。コメルツ銀の関係者によると、欧州に比べて拡販の見通しが明るいアジア市場でも短期のプロジェクトを好む傾向が中堅企業の間に広がっているという。

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このため、低金利にもかかわらず企業の事業資金需要は比較的小さい。同行のマルクス・ボイマー取締役(中小・中堅企業向け事業担当)は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し、「コメルツ銀行の融資枠は大きな金融危機(リーマンショック)の前は70~75%活用されていたが、現在は50~60%にとどまる」と明言した。

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