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2012/5/16

経済産業情報

造血幹細胞の「若返り」に成功、老化に伴い蓄積されるタンパク質を阻害

この記事の要約

血球系細胞に分化可能な幹細胞である造血幹細胞(HSC)を若返らせることに、ウルム大学を中心とする独米の研究チームが成功した。HSCの老化に伴い蓄積されるタンパク質を阻害する物質を投与するのがポイントで、遺伝子組み換えなど […]

血球系細胞に分化可能な幹細胞である造血幹細胞(HSC)を若返らせることに、ウルム大学を中心とする独米の研究チームが成功した。HSCの老化に伴い蓄積されるタンパク質を阻害する物質を投与するのがポイントで、遺伝子組み換えなど大がかりな操作は一切不要という。チームは今回の研究が老化プロセスの解明や、再生医療の発展につながると期待を寄せる。

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HSCは赤血球や白血球、血小板、リンパ球といった血液細胞に分化するほか、幹細胞自体にも分裂できる「自己複製機能」を持ち、一生を通して血液細胞を供給し続ける。ただ、老化とともに造血機能は低下し、老人性貧血などの原因となる。

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HSCは老化に伴いRhoファミリーに属するGTPアーゼの1種である「Cdc42」が蓄積されていくことが知られている。ウルム大学のハルトムート・ガイガー教授、米シンシナティ小児病院(CCHMC)のYi Zheng博士を中心とする研究チームは、老齢マウスを用いて実験を実施。Cdc42に特異的に反応して活性化を阻害する物質(CASIN)を投与したところ、HSC中のCdc42濃度が低下したことが確認されたほか、造血機能も向上した。また、老細胞内ではくずれていた細胞内の空間配置や構造が若い細胞のように整えられ、見た目でも若返ったことが観察された。

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研究成果は『Cell Stem Cell』誌に掲載された。

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