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2012/5/23

総合 - ドイツ経済ニュース

金属業界が大幅賃上げへ、4.3%で労使合意

この記事の要約

独バーデン・ヴュルテンベルク州の金属業界(自動車・電機・機械など)の労使は19日、賃金を5月から4.3%引き上げることで合意した。業界の好景気を受けて、ベースアップ幅は20年来の最高となったものの、金属雇用者団体ゲザムト […]

独バーデン・ヴュルテンベルク州の金属業界(自動車・電機・機械など)の労使は19日、賃金を5月から4.3%引き上げることで合意した。業界の好景気を受けて、ベースアップ幅は20年来の最高となったものの、金属雇用者団体ゲザムトメタルのカンネギーサー会長は「公正で(企業が)負担し得る水準だ」との立場を表明した。協定の有効期間は今年4月から来年4月までの13カ月。今年4月については賃上げが見送られた。労使はこのほか、職業訓練生(Auszubildende)と派遣社員の取り扱いについても取り決めを行った。今回の合意は他の地区でも採用される見通しだ。

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金属労組IGメタルはベア6.5%要求を掲げて労使交渉に臨んだ。これに対し雇用者側の回答は当初、約2.6%にとどまっており、労組は警告ストを実施して圧力をかけていた。今回合意が成立したことで、無期限スト入りは回避された。

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職業訓練生については修了試験の合格後に正規採用する方向で合意が取り決められた。企業は必要とする職業訓練生の数を事業所委員会との社内協定で取り決め、その数の訓練生を採用する。協定で定めた人数を超えて採用する義務はない。訓練生に関する労使協定を締結しないことも可能で、この場合は訓練期間が終了する6カ月前に事業所委との間でそのつど、正社員化する研修生の数を取り決める。正規採用枠から外れた研修生には1年間の有期雇用を雇用主に請求する権利が与えられる。

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派遣社員を投入する場合は今後、事業所委の同意を得なければならなくなる。また、採用の目的と規模、投入分野と期間、給与、正社員化に関しては同委と取り決めを行うことができる。取り決めを行わない企業は採用から18カ月後に正社員化の検討、同2年後に正規採用の実施が義務づけられる。

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財務相が大幅ベア促す

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今回大幅な賃上げ合意が成立した背景には(1)2010年2月に締結された前回の労使協定でベアが見送られていた(2)業界内に大量の受注を抱えている企業が多い(3)ドイツが欧州連合(EU)の他の加盟国から大幅な賃上げを求められている――という事情がある。

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前回協定の締結当時はリーマンショックに伴う金融・経済危機の影響が強く、IGメタルは業界の就労者が最大70万人失業すると懸念。同労組としては異例の労使協調路線を打ち出していた。

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ドイツ経済はその後、急速に回復し、10年第2四半期の国内総生産(GDP)は前期比の成長率が実質1.9%に達した。これを受けて鉄鋼業界では同年秋に3.6%のベア合意が成立。化学業界の労組も2011年春の協定で4.1%の賃上げを取り決めた。金属業界ではこの間、前回協定が有効だったため賃上げがまったくなされておらず、ベースアップ幅がある程度大きくなるのは避けられない状況だった。

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大量の受注を抱えている企業で無期限ストライキが行われると、事業計画が大きく狂い業績の下振れにつながる恐れがある。このため、労組が無期限スト入りを辞さない姿勢を強く打ち出したことは経営側が歩み寄る大きなきっかけとなった。

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金融・経済危機からV字回復したドイツに対しては、大幅な賃上げを通して国内消費を拡大し、経済不振にあえぐ他の加盟国からの輸入を増やすことを求める声が強く出ている。ショイブレ財務相はこれを踏まえ金属労使の交渉期間中にメディアインタビューで「ドイツは(長年の構造改革を通して経済力を高めるという)課題を終えた。(欧州の)他の国よりも大きな賃上げは可能だ」と発言。大幅なベアは「欧州域内の不均衡是正に寄与する」との立場を表明していた。

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ドイツのインフレ率は今年2.3%程度と見込まれている。ベア幅はこれを大きく上回っているため、業界被用者の実質収入は拡大する。

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23~24日には化学業界でも労使交渉が行われる。金属業界のベア合意は化学労組IG BCEの追い風となっており、同労組の役員は雇用者側に対し「受け入れ可能な回答」をするよう圧力をかけた。

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