ドイツの雇用情勢が依然として好調だ。労働市場回復の勢いはこれまでに比べ鈍っているものの、求人活動はなおも活発で、職種によっては人材不足が深刻化。高齢の未経験者を採用する動きも出てきた。同国は生産年齢人口が減少しており、政府や企業は労働力確保に向け国外にも目を向け始めている。
\『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』紙によると、ドイツで今年上半期に予告された新規採用(100人以上が対象)の規模は合わせて約8万8,000人に達し、人員削減予告の同5万7,000人を大きく上回った。削減予告には6月に清算されたドラッグストア大手シュレッカーの2万5,000人が含まれており、これを除くと新規採用と人員削減の比率はおよそ3対1となり、雇用は今後も拡大すると見込まれる。(下の表を参照)
\ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のハンスハインリヒ・ドリフトマン会長は『ヴェーザー・クーリエ』紙に対し、過去2カ月以上、埋まらなかった求人ポストの数が約130万件に達するとの見方を示した。
\連邦労働局(BA)は人材不足が特に深刻な職種として機械・自動車・電機分野のエンジニア、IT技術者、医療・看護要員を挙げる。IT産業では技術者4万人が不足しており、人気の高い最大手SAPでも人材確保に苦労しているようだ。
\中堅以下の企業では大卒者の獲得自体が難しい。大学生の大手志向が強いためで、中堅企業などが採用できるのは大手企業への就職に失敗した人にほぼ限られる。
\日本の高卒に当たるギムナジウム卒やレアルシューレ卒を確保するのも難しくなっている。FAZ紙によると、西南ドイツでEdekaブランドのスーパー12カ所を経営する雇用主のもとで職業訓練を行う若者の数はこの1年で280人から100人へと大きく減少した。また、粘着テープ大手Tesaのオッフェンブルク工場では将来の技術系社員を獲得する目的で、周辺の学校の生徒にレジャーパークの入場券を配っているという。
\ドイツ鉄道(DB)はこうした現状を踏まえ、債務危機で経済が低迷するスペインやポルトガル、ギリシャから専門人材を調達することを検討している。同社は今後10年で計8万人を新規採用する見通しで、国内だけで確保しきれない恐れがある。
\アンネッテ・シャヴァン教育相は先ごろ、スペインのホセ・イグナシオ・ベルト・オルテガ教育相と会談し、スペインの若者にドイツ企業で職業訓練の機会を与える考えを表明した。スペインでは若年層の2人に1人が失業していることが背景にある。シャヴァン教育相はこれらの若者に社会に出るチャンスを与えると同時に、自国の人材不足の緩和を図る意向だ。スペインとの取り組みが成果を上げれば、同様の取り組みを他の国とも進めたいとしている。
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