欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/7/18

ゲシェフトフューラーの豆知識

依存症の社員、業務に危険が伴えば解雇可

この記事の要約

アルコール依存症の社員を解雇できるのは快復の見通しが立たない場合に限られる。これについてはすでにこのコラムで何度か取り上げた。では、酩酊状態で仕事をすると本人にも周りの社員にも危険を伴う建設現場などの職場でも快復を待たな […]

アルコール依存症の社員を解雇できるのは快復の見通しが立たない場合に限られる。これについてはすでにこのコラムで何度か取り上げた。では、酩酊状態で仕事をすると本人にも周りの社員にも危険を伴う建設現場などの職場でも快復を待たなければならないのだろうか。この問題についてミュンヘン州労働裁判所が11日に判決(訴訟番号:3 Sa 1134/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

\

裁判を起こしたのはゴミ処理会社に勤務する依存症の社員。同社員は2010年1月に数度、酩酊状態で出社したため雇用主は通常解雇を言い渡した。原告はこれを不服として提訴し、第1審のアウグスブルク労働裁判所で勝訴した。被告企業はこれを受けて解雇を撤回、警告処分に切り替えた。

\

原告は8月に職場で血中アルコール濃度を測定した際に、1.81パーミルという高い数値が測定された。このため、雇用主は再度、警告処分を下した。また、原告は12月に業務中に事故を起こした。

\

雇用主は2011年3月、原告が前年5月に開始した依存症の治療を7月に勝手に中断し、その後、治療を受けていないことを主治医から通知された。これを受け4月4日付の文書で再び解雇を通告。原告はその取り消しを求めて提訴した。

\

第1審のアウグスブルク労裁は原告勝訴を言い渡したものの、第2審のミュンヘン州労裁は1審判決を破棄した。判決理由で裁判官は、アルコール依存症患者を解雇できる条件として(1)解雇通知送達の時点で依存症にかかっている(2)業務に著しい支障が出る(3)あらゆる事情を総合的に判断して、そうした支障が出ることを雇用主が受け入れることは不可能――の3点を指摘。原告のケースではこられの点をすべて満たしているとの判断を示した。(2)については業務でフォークリフトやショベルカーなど、運転を誤ると大けがや死亡事故につながる機械が使われている点を考慮した。

\

裁判官は連邦労働裁判所(BAG)への上告を認めている。

\