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2012/7/25

ゲシェフトフューラーの豆知識

有期雇用契約、更新回数が多く合計期間も長いと法濫用の兆候

この記事の要約

「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」14条によると、雇用主と被雇用者が結ぶ有期雇用契約は契約期間が計2年で最大3回まで更新できる。逆に言うと、この上限を超えた場合は契約期限のない正規の職員として採用し […]

「パートタイムと有期労働契約に関する法律(TzBfG)」14条によると、雇用主と被雇用者が結ぶ有期雇用契約は契約期間が計2年で最大3回まで更新できる。逆に言うと、この上限を超えた場合は契約期限のない正規の職員として採用しなければならなくなる。ただし、14条には産休や育休などに伴う代用職員には同規則が適用されないことも記されている。

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この適用除外ルールに関する係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が判断を示したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのはケルン区裁判所に1996年7月2日から2007年12月31日までの11年半、代用職員として継続的に勤務していた女性職員。この間に有期労働契約を結んだ回数は13回に上った。08年1月以降については契約を更新されなかったため、これを不服として雇用主であるノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州を提訴。代用職員であれば有期雇用契約を無制限に更新できるとしたTzBfG14条の規定は有期雇用契約を連続して結ぶことを禁止したEU指令「1999/70/EG」の附則5条1項の規定に反すると訴えた。

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第1審のケルン労働裁判所と第2審のケルン州労働裁判所は原告の訴えを棄却した。一方、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は欧州司法裁判所(ECJ)の判断を仰いだ。

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欧州司法裁が下した判断はTzBfG14条の規定はEU法に違反していないというものだった。判決理由で裁判官は、適切な理由があれば有期雇用契約を無制限に更新できるとしたEU指令「1999/70/EG」附則5条1項aの規定を指摘した。その一方で、契約更新の回数が多く合計の雇用期間も長い場合はEU規定の濫用に当たる可能性があるとの判断を示した。

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BAGはこれを受けて、原告のケースでは契約回数が13回と多く合計の雇用期間も長いと指摘したうえで、裁判をケルン州労裁に差し戻した(訴訟番号:7 AZR 443/09)。同州労裁に対しては、NRW州が原告を正規採用せず有期契約を更新し続けた理由を検証して判決を下すよう命令した。

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