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2012/9/19

総合 - ドイツ経済ニュース

航空・防衛の最大手誕生か、EADSとBAEが合併協議

この記事の要約

欧州航空宇宙最大手のEADSと英防衛大手BAEシステムズは12日、合併に向けて交渉している事実を明らかにした。合併が実現すると、売上高750億ユーロの新企業が誕生。航空宇宙・防衛分野で現在世界最大の米ボーイング(売上高5 […]

欧州航空宇宙最大手のEADSと英防衛大手BAEシステムズは12日、合併に向けて交渉している事実を明らかにした。合併が実現すると、売上高750億ユーロの新企業が誕生。航空宇宙・防衛分野で現在世界最大の米ボーイング(売上高530億ユーロ)を大幅に凌ぐ見通しだ。

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EADSとBAEを統括する持ち株会社を設立する方向で協議しており、新会社の出資比率はEADSが60%、BAEが40%となる見通し。両社は持ち株会社の設立後も上場を続ける。

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EADSは売り上げの3分の2を占める航空機事業への依存度を引き下げる方針を打ち出しており、軍需企業BAEとの合併はこれに合致している。EADSの足場が弱い米国の軍需市場でBAEが強い基盤を持っていることもプラス要因だ。

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BAEは主要国の軍需予算削減という問題に直面しており、民間機事業に強いEADSと合併すればこの問題を解消できる。米国は今後10年で軍事予算を計5,000億ドル節減する方針を打ち出している。同社はEADSの航空機子会社エアバスに出資していたが、2006年に同株を売却し、防衛事業に経営資源を集中した経緯がある。

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競合ボーイングは両社の合併計画に対し静観の構えを見せており、同社のジェームズ・マックナーニ社長は「わが社にとって本質的な脅威とはならない」との見方を表明した。

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米軍が実施した空中給油機入札でEADSが一度落札したにもかかわらず、ボーイングが横やりを入れて2011年に受注を奪い取ったことは記憶に新しい。米軍に太いパイプを持つBAEがEADSと合併すれば、こうした事態は起こりにくくなる可能性がある。

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取引の成立には株主と独禁当局のほか、独仏英米政府の承認が必要となる。米国政府はBAE最大の顧客のためその承認が欠かせない。メディア報道によると、ドイツとフランス、英国は新会社の黄金株を取得し、敵対的な買収への拒否権を確保するもようだ。

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関係各国の政府が合併を受け入れるかどうかは現時点で定かでない。合併計画については以前から情報を受け、協議も進めているものの、独仏政府は(1)国内拠点と雇用が維持されるか(2)新会社への影響力が現在EADSに対して持つ影響力よりも弱まらないか――を特に懸念しているようだ。『ハンデルスブラット』紙によると、EADSのエンダース社長は(1)の点については民生部門の事業拠点維持をすでに確約したという。

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各国に黄金株を与えることについてはEU法に抵触するとの懸念が出ている。政府の黄金株が認められるのは公益や軍需など国家の存立にかかわる分野に限られているためだ。新会社の部門別売上比率は軍需が43%に上るものの、それ以外の民間機(41%)、航空宇宙(7%)、ヘリコプター(7%)の合計は55%に達しており、同社は(黄金株が認められる)軍需企業とは見なされない可能性がある。

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また、両社の合併が認められる場合でも、競争法上の理由で事業の部分放出を命じられる可能性が高い。また、ボーイングやロッキード・マーチンを凌ぐ企業の誕生に米国がゴーサインを出さない懸念がある。

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