欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2012/12/5

総合 - ドイツ経済ニュース

海底送電線の責任問題明確化へ、法案が下院通過

この記事の要約

独連邦議会(下院)は11月29日、エネルギー経済法(EnWG)改正案を与党の賛成多数で可決した。最大の目玉は海底送電線の敷設遅延や送電障害が起きた場合の補償ルールで、政府はこれにより洋上風力発電パークと海底送電線に安心し […]

独連邦議会(下院)は11月29日、エネルギー経済法(EnWG)改正案を与党の賛成多数で可決した。最大の目玉は海底送電線の敷設遅延や送電障害が起きた場合の補償ルールで、政府はこれにより洋上風力発電パークと海底送電線に安心して投資できる環境を整え、再生可能エネルギーの普及を加速させる意向だ。送電網の建設遅延などで発生するコストは洋上風力発電事業者、送電事業者および消費者などの需要家が負担する。法案は今後、州の代表で構成される連邦参議院(上院)で採決される。上院で過半数票を握る野党は法案を批判しており、政府の計画通り来年1月に施行されるかは定かでない。

\

法案が施行されると、送電事業者は海底送電線の敷設計画案を監督官庁の連邦ネットワーク庁に毎年、提出することが義務化され、同庁の承認を受けた後は履行を義務づけられる。洋上風力発電事業者はこれにより、事業計画を立てやすくなる。

\

海底送電線の敷設遅延や長期の送電障害が起きた場合、送電事業者は損失の90%を洋上風力発電事業者に補償しればならない。ただし、送電各社の負担額は年1億1,000万ユーロを上限としており、それを超える分については需要家である消費者や企業に転嫁できる。

\

転嫁額は1キロワット時(kWh)当たり0.25セントで、政府によると、年間電力消費量3,500kWhの標準世帯では負担額が8.75ユーロ、同5万kWhの企業では125ユーロに上る。

\

EnWG改正案にはまた、電力需要が増加する冬季などに石炭・ガス発電所の事業者に施設稼働を命じる権限を連邦ネットワーク庁に付与する条項も盛り込まれた。ブラックアウト(大停電)を回避することが狙いで、発電事業者は不採算の施設でも稼働させなければならない。

\

これらの発電事業者には補償金が支給され、補償金は電力料金を通して需要家が負担する。負担額は1kWh当たり0.024セントで、標準世帯では年0.84ユーロの負担増となる。

\

EnWG改正案にはさらに、電力需給がひっ迫した際に鉄鋼などのエネルギー集約型企業が節電に協力すると、報奨金が支払われるルールも盛り込まれた。

\

北海での送電網敷設・運営を義務づけられているテンネット社は連邦議会の法案可決に歓迎の意を示した。同海域の洋上風力発電パーク建設プロジェクト数は現在、計10件で、発電能力は合わせて5,500メガワットに上る。送電網の敷設コストは約60億ユーロに達する見通しで、外部の投資家の出資なしには費用を捻出できない。

\

\

再可エネ助成制度にEU法違反の疑い

\

\

ドイツが進める再可エネ利用の大幅拡大計画はすでに、電力料金の上昇を招いている。石炭などの従来型発電で生産された電力よりも割高な価格で買い取ることが送電事業者に義務づけられ、最終的に電力料金に転嫁されているためだ。

\

複数のメディアが11月29日付で報じたところによると、欧州連合(EU)の欧州委員会は同制度がEU法で禁じられた不当な国家助成に当たる可能性があるとして非公式の調査を開始した。苦情を受けて情報収集に乗り出した格好で、すでに独連邦経済省・連邦環境省の役人と協議を行ったという。

\

EU法違反の疑いがかけられているのは(1)再可エネ電力の買い取り価格に関するルール(2)同電力の買い取りに伴う需要家の負担義務をエネルギー集約型企業に適用しない特例措置――の2点。(2)はドイツの産業立地競争力を維持するための措置だが、その結果として一般消費者や中小企業の負担が増えるため、批判が出ている。

\

欧州委はまず、これらのルールが国家助成に当るかどうかを審査したうえで、国家助成に該当すると判断した場合はEU法上、許容されるものかどうかを吟味する。欧州委と独当局が行った協議の覚書には正式調査が来年2月に始まる見通しと記されているという。

\