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2012/12/12

総合 - ドイツ経済ニュース

EADSの株主構成変更で合意、独仏の議決権は各12%に

この記事の要約

ドイツ、フランス、スペインの3カ国と独自動車大手ダイムラー、仏複合企業ラガルデール、欧州航空宇宙大手EADSは5日、EADSの新しい株主構成について合意した。ドイツとフランスの対等出資を維持しながら浮動株比率を大幅に高め […]

ドイツ、フランス、スペインの3カ国と独自動車大手ダイムラー、仏複合企業ラガルデール、欧州航空宇宙大手EADSは5日、EADSの新しい株主構成について合意した。ドイツとフランスの対等出資を維持しながら浮動株比率を大幅に高めることが柱で、EADSは「仏独西の正当な戦略的な利害を守りつつ企業統治の正常化・簡素化を狙った」措置だと説明した。今回の合意は来年上半期の臨時株主総会で正式に承認される予定だ。

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株主構成を変更するのは、ダイムラーとラガルデールが出資比率の引き下げの意向を示していたため。EADSには3国の国益が強くからんでいるため、同2社は自らの判断だけでは保有株を放出できない事情がある。

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ダイムラーは保有する計15%のうち約7.5%を年内に放出したい考えで、約4.6%については市場で売りさばく。最終的にはEADSから全面撤退する意向。

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今回の合意ではフランスとドイツの議決権比率をそれぞれ12%、スペインを同4%とし、3国の合計を28%にすることが取り決められた。フランスとスペインがすでに国営投資会社を通してEADS株を保有しているのに対し、ドイツはこれまで保有していなかったため、政府は政策金融機関KfWを通してEADS株を確保する。また、フランスは出資比率が将来も15%に上るため、そのうちの3%を同国の影響が及ばない財団に移管。同財団は株主総会で常に、過半数決議を支持することを義務づけられる。

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KfWはダイムラーから2.76%、ドイツの銀行のコンソーシアムから7.44%をそれぞれ買い取り、合わせて10.2%を取得する。EADSが最大15%の自社株買いを実施するため、KfWの出資比率は12%に上昇。ドイツの出資比率はフランスと同じ水準に達する。両国の出資比率はこれまで、官民の合計で均衡が取れていた。

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EADSは自社株買いを2度に分けて実施。1度目は全株主を対象に計7.5%を買い上げ、2度目は主にラガルデールから買い取る予定だ。

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これら一連の手続きが終了すると、浮動株比率は現在の約49%から70%以上に上昇する。

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独仏の影響力は低下

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EADSの経営にはこれまでドイツとフランスの影響が強く反映されており、トム・エンダース社長は「独仏は拘束衣」と批判してきた。英BAEシステムズとの合併計画が10月にとん挫したのも、ドイツとフランス政府が合併で成立する予定だった新会社への出資比率で合意できなかったためだ。

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今後は経営上の決定を取締役会がこれまでよりも自由に行えるようする方針で、出資各国には拒否権が認められないほか、新たな監査役を推薦する権限を社長に付与する。また、12人の監査役のうち8人は大株主から独立した立場の人物が占める。

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ダイムラーは1980年代に航空宇宙事業に参入したが、ユルゲン・シュレンプ前社長(1995~2005年)の下で経営資源を自動車に絞り込む戦略に転換。EADSからの撤退を模索していた。

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保有するEADS株のうち7.5%を放出すると、16億6,000万ユーロの売却益が入る。同社はこれをグローバル事業や製品・技術開発の強化に充てる方針。残り7.5%は契約上は来年半ば以降、手放すことができるものの、現時点で具体的な計画は定めていない。

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