電子メールで採用募集に応募したにもかかわらず、何の返事ももらえなかった――。この場合、電子メールが募集企業のメールボックスに着信していたかどうかを証明する義務は誰にあるのだろうか。この問題をめぐってベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が昨年11月に決定(訴訟番号:15 Ta 2066/12)を下したので、ここで取り上げてみる。
\問題の発端となったのはある企業が自社のホームページで行った採用募集。この募集で外国人ゆえに差別されたと主張する男性が、一般平等待遇法(AGG)15条2項に基づく損害賠償訴訟を起こそうとして、それに必要な訴訟費用の立て替えを裁判所に申請した。
\同男性は◇2011年11月20日付の電子メールで応募した◇返信がなかったため、12年4月2日になって問い合わせのメールを送信した――と主張。2度の送信にもかかわらず返信がなかったのは自分が外国人だからだと訴え、その根拠として同企業が応募条件に「ドイツ語を母語とすること」を挙げていたことを指摘した。また、電子メールが同企業に届いていたことの証拠としては、電子メールの送信履歴を提示した。
\これに対し第1審のブランデンブルク労働裁判所は原告の申請を却下。第2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁も1審決定を支持した。決定理由で裁判官はまず、「ドイツ語を母語とすること」という応募条件が差別の兆候に当たるかどうかは断定できないと指摘。そのうえで、電子メールを発信したという事実だけではそのメールが着信したことの証明にならないと言い渡し、同男性が着信したと主張するのであれば自らの手で証明しなければならないとの判断を示した。
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