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2013/3/20

ゲシェフトフューラーの豆知識

「同一労働には同一賃金」の原則で最高裁判断

この記事の要約

派遣会社は派遣社員に対し、派遣先企業の従業員と同一の賃金を支給しなければならない。これは被用者派遣法(AUEG)10条4項第1文に明記されたルールである。ただ、同項第2文には、派遣業界に労使協定がある場合は、派遣社員の賃 […]

派遣会社は派遣社員に対し、派遣先企業の従業員と同一の賃金を支給しなければならない。これは被用者派遣法(AUEG)10条4項第1文に明記されたルールである。ただ、同項第2文には、派遣業界に労使協定がある場合は、派遣社員の賃金を独自に定めることができるとの規定がある。派遣業界ではこの第2文の規定を利用して、派遣社員の賃金を派遣先企業の社員よりも低く抑えている。

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では、派遣業界の労使協定を無効とする判決が下った場合、派遣社員は派遣先企業社員の給与との差額を派遣会社に請求できるのだろうか。この問題をめぐる5つの係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が判断を示したのでここで取り上げてみる(訴訟番号:AZR 954/11、5 AZR 146/12、AZR 242/12、5 AZR 294/12、5 AZR 424/12)。

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BAGは2010年12月14日の判決で、キリスト教系労働組合と派遣業界団が締結した労使協定(CGZP)が無効であるとの判断を示した(訴訟番号:1 ABR 19/10)。これを受け、同協定に基づき低い賃金を受け取っていた派遣社員の一部はそれぞれの雇用主に対し過去に遡って派遣先企業社員の給与との差額を支払いよう要求。裁判を起こした。

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BAGは13日、これらの訴訟のうち5件について判決を下した。判決文はまだ公開していないものの、プレスリリースで判断基準を提示。CGZPに基づき賃金を受給していた派遣社員にはAUEG10条4項第4文の規定に基づき、派遣先社員と同一の賃金を受け取る権利が原則としてあるとの判断を示した。つまり、差額を受け取る権利を認めたわけである。

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ただ、請求権は3年で時効消滅するとも指摘。また、雇用主と各派遣社員が結ぶ労働契約で除斥期間(一定期間の経過によって権利を消滅させる制度)を取り決めている場合は、同期間の経過により請求権が消滅すると言い渡した。除斥期間については最低3カ月なければならないとしている。

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■ 被用者派遣法(AUEG)10条4項第4文

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派遣事業者と派遣社員が結ぶ取り決めが無効である場合、派遣事業者は派遣社員に対し、派遣先企業で同等の業務を行う正社員と同等の雇用条件(賃金を含めて)を提供しなければならない。

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