独連邦政府と州政府の代表は21日、原子力発電の廃止を前倒して再生可能エネルギーの普及を加速する「エネルギー転換政策」の実施に伴う問題点を協議した。中心テーマとなったのは高圧送電網の敷設と再生可能エネルギー法(EEG)改正の2点で、高圧送電線については敷設区間が複数の州にまたがる場合、許認可権限を各州から国の機関である連邦ネットワーク庁(BNetzA)に移管することで合意が成立。EEG改正についても既存の再可エネ発電施設で生産された電力の買い取り価格を引き下げないことが取り決められた。
\エネルギー転換政策では風力の強い北部地域の風力発電パークで生産された電力を南部地域に送電することが大きな柱の1つとなっている。ただ、送電網の建設許可権限は現在、各州当局が持っているため、複数の州にまたがる敷設プロジェクトでは認可手続きに時間がかかるという問題がある。同権限を国に集約すれば時間の無駄が大幅に省けるため、連邦政府は州政府に対し権限の移譲を要求。州サイドは今回、6月の連邦参議院(上院)で当該法案を承認することを確約した。
\エネルギー転換政策を受けて太陽光や風力発電設備を新設する動きが急増したため、ドイツでは現在、再可エネ電力の助成総額が膨らんでおり、同電力の買い取りに伴う一般需要家の負担額は今年、前年比47%増の1キロワット時(kWh)当たり5.277セントへと上昇した。年間消費量3,500キロワット時の標準世帯では年負担額が昨年の125ユーロから185ユーロへと跳ね上がる。
\負担が今後も急速に増え続けると、家計や経済に悪影響をもたらすため、政府は負担抑制策を検討。アルトマイヤー連邦環境相とレスラー連邦経済相は2月、EEGの改正原案を発表した。
\原案のなかには既存の再可エネ発電施設向けの助成額を1年間に限り一律1.5%下げるという項目が含まれおり、これが産業界に波紋を広げていた。政府による助成額の一方的な引き下げはドイツのエネルギー政策に対する国内外投資家の信頼を著しく傷つけるためだ。連邦政府と州政府はこれを踏まえ今回、既存施設については助成額を引き下げないことを取り決めた。
\連邦政府と州政府はまた、EEGに伴う消費者負担の軽減に向けて短期的な対策を協議する作業部会を設置することでも合意した。同部会は5月までに対策案をまとめ上げる予定。抜本的な長期対策案の作成は9月の連邦議会(下院)選挙後に成立する新政権に委ねられる。
\ \最終保管地の選定白紙化へ
\ \一方、独連邦政府とニーダーザクセン(Nds)州政府は24日、国内の原子力発電所で発生した高濃度核廃棄物の最終保管地の選定に向けた基本問題を、連邦議会(下院)に設置する調査委員会で明らかすることを取り決めた。これにより最終保管地の選定作業再開に向けた両者の対立は終了した格好で、ドイツに最終保管施設が設置される可能性はこれまでよりも高まった。
\Nds州にはドイツ唯一の最終保管地候補であるゴアレーベン岩塩鉱跡地がある。だが、同跡地については地質学上、最終保管に適さないとの批判があるほか、地元住民の反対運動も根強い。このため連邦政府は2011年11月、最終保管地の選定を仕切り直す目的で、選定方法について国内16州の政府と協議を開始。12年12月にはゴアレーベンの適性調査を今年9月の連邦議会選挙まで凍結することも決定した。
\Nds州政府は最終保管地の選定方法を協議するに当って、ゴアレーベンを候補地から排除することを要求していたが、今回の合意でこの方針を撤回。同跡地が候補になりうるかどうかの判断を新設する調査委員会に委ねることにした。
\同委員会は連邦議会議員と科学者、および環境保護団体、経済界、労組、教会の代表で構成され、委員定数は24人。当該法案の可決を経て年内にも作業を開始し、15年末までに最終報告書をまとめ上げる予定だ。議会は同報告書をもとに最終保管地を選定する。
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