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2013/5/22

総合 - ドイツ経済ニュース

中国とEUの通商摩擦を財界が懸念

この記事の要約

欧州連合(EU)と中国の通商摩擦の行方をドイツが懸念している。対立が激化するとドイツの製造業に悪影響をもたらすためで、経済界は話し合いを通した問題解決を要請。政府は20日、「中国からのソーラー製品の輸入で公正な競争をもた […]

欧州連合(EU)と中国の通商摩擦の行方をドイツが懸念している。対立が激化するとドイツの製造業に悪影響をもたらすためで、経済界は話し合いを通した問題解決を要請。政府は20日、「中国からのソーラー製品の輸入で公正な競争をもたらす解決策」(政府報道官)を模索する意向を表明した。26~27日にベルリンで開催される独中首脳会談では貿易問題が大きなテーマとなりそうだ。

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欧州委員会は8日、中国製の太陽光パネルに暫定的な反ダンピング(不当廉売)税を課すことを決めた。加盟国の意見を聞いたうえで、6月6日から実施する見通しだ。反ダンピング税の税率は平均47.6%で、最高67.9%となる見込み。

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欧州委は15日には、中国製の通信設備についても反ダンピングおよび反補助金調査を開始する方針を打ち出した。携帯電話用の通信設備で中国メーカーが政府の補助金を後ろ盾にして、製品を不当な廉価でEU市場に輸出している疑いがあるとしている。欧州委のデフフト委員(通商担当)はロイター通信のインタビューで、華為技術(Huawei)と中興通訊(ZTE)を標的にしていることを明らかにした。

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太陽光パネルへの反ダンピング課税は、欧州で太陽光パネルを生産する20社以上が加盟する業界団体「EUプロサン」の苦情申し立てを受けて実施される。ただ、EU内では同ダンピング課税に反対する企業が「手ごろな価格の太陽エネルギーのためのアライアンス(Afase)」という団体を設立してEUプロサンに対抗しており、EUのソーラー業界は一枚岩ではない。太陽光発電セルの材料となる多結晶シリコンの有力メーカーである独ワッカー・ケミーは反ダンピング税の導入を批判している。

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独卸売・貿易業者連盟(BGA)のアントン・ベルナー会長は「オイロ・アム・ゾンターク」誌に対し、「中国で太陽光発電モジュールを生産しドイツに設置する場合、これらの過程で創出される価値の70%はドイツで生みだされる」と指摘。反ダンピング税を導入すればドイツの手工業者や太陽電池製造装置メーカーなど、太陽電池メーカー以外の事業者も大きなしわ寄せを受けるとの見方を示した。独産業連盟(BDI)のウルリヒ・グリオ会長は「EUと中国の双方に損害をもたらすだけだ」と言い切る。

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ドイツの対中国輸出額は1995年年以降、年15.8%のスピードで拡大し、12年には12倍の666億ユーロに拡大した(グラフ参照)。欧州経済の低迷が長期化する様相を帯びるなか、中国市場の重要性が今後、一段と高まるのは確実で、政府も経済界も同国との関係悪化を回避したい考えだ。

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