勤務時間の長さを労働契約で取り決めていない社員には当該企業の通常の勤務時間が適用されるとするルールがドイツにはある。このルールは労使協定の拘束を受けない社員にも適用されるかどうかという問題をめぐる係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が15日に判決(訴訟番号:10 AZR 325/12)を下したので、ここで取り上げてみる。
\裁判はエネルギー大手のRWEを相手取ってコンサルタント業務を担当する44歳の女性社員が起こしたもの。労働契約書には「通常の勤務時間以外も勤務する」と書かれた以外は勤務時間に関する規定がない。また、年収は9万5,000ユーロと高く、労使協定の拘束を受けていない。
\RWEは2010年秋になって、同社員には03年以降、計700時間の労働時間不足が発生しているとして、10月以降は日に最低7.6時間、週に同38時間は勤務することを命令。同社員が受け入れを拒否したうえ、12月の勤務時間が月19.8時間、翌年1月が同5.5時間と極端に少なかったため、10月から1月までの4カ月間、給与支給額を計7,000ユーロ引き下げた。
\これに対し原告は、RWEから与えられた仕事をこなすことが労働契約上の義務であり、労働時間の長さについては拘束を受けないと主張。その確認を求めて提訴した。
\原告は1、2審で敗訴。最終審の連邦労裁も下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、「(原告と被告の)労使契約は原告が達成しなければならない仕事を測る基準として被告企業の通常の勤務時間を用いている」と指摘。被告は原告が勤務しなかった時間に対し報酬を支払う義務はないとの判断を示した。
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