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2014/1/8

ゲシェフトフューラーの豆知識

製薬工程の社員をエイズ理由で解雇、最高裁が差し戻し

この記事の要約

HIV(エイズウイルス)への感染を理由に製薬会社の社員が解雇された訴訟で、第1審と第2審がともに解雇を妥当とする判決を下したことはすでに本コラムでお伝えした(2011年8月10日号、2012年1月18日号)。この係争で最 […]

HIV(エイズウイルス)への感染を理由に製薬会社の社員が解雇された訴訟で、第1審と第2審がともに解雇を妥当とする判決を下したことはすでに本コラムでお伝えした(2011年8月10日号、2012年1月18日号)。この係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年12月19日に判決(訴訟番号:6 AZR 190/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは2010年に製薬会社に化学技術助手として採用された男性社員で、仕事場は医薬品工場内のクリーンルームだった。採用直後の健康診断でHIVに感染している事実を伝えたところ、その連絡を受けた雇用主から製品の安全性を理由に解雇を通告された。

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これを受けて同社員は、HIV感染を理由に解雇することは許されないと主張。また解雇は一般平等待遇法(AGG)で禁じられた障害者差別に当たるとして、解雇無効の確認と慰謝料(月給3カ月分)の支払いを求める訴訟を起こした。

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第1審のベルリン労働裁判所は解雇を妥当とする理由として、原告が試用期間中だったことを挙げた。これに対し第2審のベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所は、病気の社員をクリーンルームでの業務に一切投入しないという被告企業の経営方針は社員に対する誠実な対応を雇用主に義務づけた民法典(BGB)242条の規定に抵触しないと指摘。試用期間中かどうかに関わりなく、解雇は妥当だとの判断を示した。

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一方、最高裁のBAGは、下級審の審理では予防措置を講じれば原告をクリーンルーム勤務に投入できるかどうかが解明されていないと指摘。第2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁に裁判を差し戻し、この点を解明したうえで判決を下すよう命じた。予防措置を講じることが可能であれば解雇は不当となり、被告企業には慰謝料支払いの義務が発生するとしている。

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