ドイツのクリスティアン・ヴルフ前大統領が映画製作会社の社長から利益を享受した見返りに違法な便宜を図ったとして収賄罪に問われている裁判で、1審のハノーバー地方裁判所は2月27日、無罪判決を言い渡した。裁判官は、容疑は裏付けられなかったと指摘。そのうえで、捜査で苦痛を受けた前大統領に補償金を支払うことを当局に命じた。ドイツの大統領経験者が起訴されたのは今回が初めてで、注目を集めていた。
前大統領はニーダーザクセン州首相当時の2008年秋、ミュンヘンのホテルに宿泊した。その際の宿泊・飲食料金およそ720ユーロを映画会社German Filmproductionのダーフィット・グローネヴァルト社長(当時)が支払った。
ヴルフ首相(当時)はその2カ月半後、シーメンスのレッシャー社長(当時)と会談。グローネヴァルト社長が作成する映画への援助を要請した。ハノーバー検察庁はこれが贈収賄に当たるとして13年4月、前大統領とグローネヴァルト氏を起訴した。検察は最高裁の連邦司法裁判所(BGH)に上告できるため、無罪は確定していない。
ヴルフ氏は12年2月に大統領を辞任した。便宜の供与・享受を繰り返していたとのメディア報道を受けて国民の支持が急速に低下。検察当局も捜査の準備に入ったため、職務の遂行が困難になったと判断した。