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2014/6/4

ゲシェフトフューラーの豆知識

差別の損賠請求期限で最高裁判決

この記事の要約

採用募集などで差別された場合、応募者は募集を行った企業などに損害賠償と慰謝料の支払いを請求できる。これは一般平等待遇法(AGG)15条1項、2項に明記されたルールである。同4項には、同請求は採用拒否の連絡を受けてから2カ […]

採用募集などで差別された場合、応募者は募集を行った企業などに損害賠償と慰謝料の支払いを請求できる。これは一般平等待遇法(AGG)15条1項、2項に明記されたルールである。同4項には、同請求は採用拒否の連絡を受けてから2カ月以内、ないし差別の事実を知ってから2カ月以内に文書で行わなければならないと記されている。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が5月22日の判決(訴訟番号:8 AZR 662/13)で同4項の解釈を提示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はプール運営事業者を相手取って、同事業者の採用募集に応募した障害者が起こしたもの。被告はプール監視や水泳教室などの担当者が育児休暇を取得したため、2011年10月に代理の職員を募集した。原告はこれに応募し、11月7日付の電子メールで採用通知を受け取った。

12月16日に勤務先となるプールを見学した際、多発性硬化症(MS)を罹患する障害者であることを伝えたところ、23日付の文書で労働契約を結べないとの連絡を受けた。同文書が原告に届けられたのは28日だった。

原告はこれを受け12年2月20日に提訴したものの、訴状が被告に送達されたのは29日で、原告が採用拒否の通知を受け取ってから2カ月と1日が過ぎていた。

原告は1審で勝訴したものの、2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所は、損害賠償と慰謝料の支払いの請求は2カ月以内に行わなければならないとするAGG15条4項の規定を根拠に1審判決を取り消した。

最終審のBAGは2審判決を破棄し、裁判をシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁に差し戻した。判決理由で裁判官は、文書の送達日をもって有効期限が定められている場合は期限内に裁判が起こされていれば、文書が期限後に請求先に送達されても請求権は失われないとした民事訴訟法(ZPO)167条の規定を指摘。原告は採用拒否の通知を受けてから2カ月以内に裁判を起こしており、請求権が失効したとする2審判決は誤りだとの判断を示した。