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2014/7/23

総合 - ドイツ経済ニュース

VWがコスト問題にナタ、販売面でも中国依存を是正へ

この記事の要約

世界最強の自動車メーカーになるというフォルクスワーゲン(VW)グループの目標に黄色信号が灯りだしているようだ。販売台数は中国事業が強力なけん引車となり急速に伸びているものの、北米、東南アジア、インドなど同グループの足場が […]

世界最強の自動車メーカーになるというフォルクスワーゲン(VW)グループの目標に黄色信号が灯りだしているようだ。販売台数は中国事業が強力なけん引車となり急速に伸びているものの、北米、東南アジア、インドなど同グループの足場が弱い市場では販売が低迷。利益率でも、ライバル視するトヨタ自動車に大きく水をあけられており、経営陣は態勢の立て直しに乗り出した。

VWは2007年11月、年間販売台数を18年までに1,000万台に拡大し、世界最大手になるとの目標を打ち出した。利益率でもトヨタ、米ゼネラル・モーターズ(GM)を上回る目標だ。

販売台数については目標に向けて着実に進んでおり、07年の619万台から10年の728万台、11年の821万台、12年の907万台と急速に拡大。13年には973万台に引き上げ、トヨタ(同998万台)の背中をとらえた。今年はトヨタと並んで1,000万台の大台に乗り、目標数値を4年前倒しで達成する見通しだ。

世界最大の市場となった中国で販売台数を年2ケタ台のスピードで拡大していることが大きい。VWは同国の販売台数を18年までに13年の327万台から400万台に拡大する計画で、グループの世界販売代数は今後も増え続ける可能性が高い。

だが、中国以外の市場に目を向けると、足元の欧州は長期低迷。世界第2位の市場である米国では販売台数が昨年、7%落ち込んだ。将来性が高いインドと東南アジアにも食い込めておらず、市場シェアはそれぞれ2%強、1%強にとどまる。

欧州では経済低迷が今後も続く見通しであるうえ、VWグループのシェアが25%と大きいため、市場開拓の余地は小さい。同社はこれを踏まえ、米国、インド、東南アジア事業の強化方針を最近、相次いで打ち出している。米国では人気の高いSUVの現地生産を16年末から開始。同国販売を18年までに13年の40万台から80万台に倍増させる。インドでは現地での部品生産を増やしコストを削減するとともに、顧客のニーズに見合ったモデルを投入していく。東南アジアでは現地生産に向けてタイに工場を設置する方向。中国市場への過度の依存を是正していく考えのようだ。

VWブランドで50億ユーロ削減へ

VWグループの売上高営業利益率は昨年6.25%だった。前年からはやや上昇したものの、トヨタの8.92%(14年3月期)を大きく下回っている。アウディ、ポルシェなどの高級ブランドは高い利益率を確保した一方で、最大のブランドであるVWが2.9%にとどまったためだ。今年第1四半期(1~3月)には同ブランドの利益率が1.8%に低下し、第2四半期(4~6月)はさらに下がったとみられる。

ヴィンターコルン社長はこれを受けて15日、本社所在地ヴォルフスブルクのコングレスセンターで管理職1,000人以上を前に講演し、VWブランドのコスト削減方針を明らかにした。現状では同利益率を18年までに最低6%に引き上げるとした目標の達成が難しいと判断。収益力強化に向けた包括的なプログラムを実施し、17年までにコストを50億ユーロを圧縮する。収益力が低迷するのは内部に問題があるためで、単に市場競争が厳しいからではないと強調している。

コスト削減に向けては固定費・変動費をともに圧縮。世界に100以上ある工場や、10年からこれまでに80%膨らんだ研究開発費にメスを入れる。調達コストも削減する考えのため、サプライヤーは対応を迫られそうだ。同社はまた、競合に比べて高い内製比率の引き下げを検討する。

現在310あるモデルの種類も減らす意向。『ハンデルスブラット』紙が社内情報として報じたところによると、06年に発売したクーペカブリオレ「イオス」は次世代モデルを投入しないもようだ。

VWブランドの利益率が低いことについて経営陣はこれまで、同ブランドがグループ全体の発展に財務・技術面で貢献しているとして問題視してこなかったが、ヴィンターコルン社長は今回、方針を転換した。